三井不動産が頭一つ抜ける展開に?三菱地所、住友不動産の戦略は?不動産業界「5年後の勝者」を大予測!Photo:Bloomberg/gettyimages

コロナ禍を乗り越え、業績を着実に伸ばしてきた不動産セクター。積極的な資産売却も利益成長を加速させており、各社の中期経営計画には最高益更新やROE(自己資本利益率)向上など強気予想が目立つ。ただし、中長期を展望すると忍び寄るリスクも見え隠れする。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#9では、不動産セクターのキーワードを解説しつつ、財閥系不動産や準大手不動産の戦略を解説。今後5年間で躍進が期待できる企業や意外なニッチ企業も紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

不動産大手5社が連続最高益へ
「資産売却」で成長スピードが加速

 不動産大手5社(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングス)が2025年3月期に続き、26年3月期も連続で最高益更新を見込むなど、足元の不動産セクターの事業環境は良好だ。強弱はあるものの、主力事業であるオフィス賃貸、マンション分譲、不動産売買などそれぞれが好調に推移している。

「オフィスは好立地のハイグレードビルとそれ以外で賃料上昇ペースが異なるのは事実だ。だが、二極化の負け組に属するとみられるビルも空室率が低下するなど恩恵を受けてきている」(大和証券の増宮守アナリスト)

 野村證券の福島大輔マネージング・ディレクターは「金利上昇や建設資材高騰のネガティブインパクトを賃料上昇のポジティブインパクトが凌駕している」と指摘する。

 企業の変革も業績拡大につながっている。大手不動産は資産売却を増加させており、利益成長のスピードが加速。従来の「安定感はあるが成長性はない」というイメージから変化しつつある。

 増宮氏は今後数年間の主力企業の業績について「不動産市況が大きく崩れないという条件付きではあるが、年平均8%程度の利益成長が期待できる」と分析する。

 福島氏も保有不動産を売却して含み益を実現させていく「回転型ビジネス」を各社が強化していることを評価する。

 もともと不動産セクターには資本効率が高くないという問題があった。特に大手不動産会社が主力としているオフィスの賃貸業は利益が安定しているが、資産が固定化する上に、資産利回りは3~5%程度しかなく、ROE(自己資本利益率)が高くなりにくい。

「好調なファンダメンタルズが続いたこともあり、稼いだお金を株主に還元するのか、成長のための再投資に使うのかなどが問われる局面になっている。株主還元が少し弱いセクターと指摘されてきたが、アクティビストからの圧力もあり、従来よりも株主還元にも積極的になってきている。この動きは始まったばかりで、今後も資産の組み替えが進むだろう」(福島氏)

 今後の懸念材料としてはさらなる「金利の上昇」が挙げられる。賃金上昇も物価上昇に追い付いていない。

「メインシナリオではないが、金利と不動産期待利回りが一緒に上がるような展開になると厳しい。売却益については不動産の価格が下がるトレンドになると従来のような増益は期待できない。株価については、実際に不動産価格が下落しなくても、その懸念が意識されるだけで上値が重くなるだろう」(増宮氏)

 逆風も吹き始める中、従来よりも高い成長を求められるなど経営力が問われる局面に突入する不動産セクター。財閥系を中心に年収水準が高く、就職人気も高い不動産セクターだが、序列の変化はあるのか。

 次ページでは、中長期では忍び寄るリスクにも触れつつ、主要企業の戦略を紹介。今後5年間で躍進が期待できる企業や、ニッチ市場で躍進する企業などについても具体名を挙げて解説していく。

図表:不動産5年後サンプル