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未曾有の国難が続く4月10日、統一地方選前半戦が実施された。自粛ムードに覆われた異例の選挙戦となり、大震災の影響は結果にも表れた。
12都道県知事選では現職が圧倒的な強さを見せ、立候補者全員(9人)が当選。一方、道府県議選は議会不信も加わり、戦後最低の投票率(48.15%)を記録した。しかも、無投票当選者が全国平均で2割近くに達するなど、民意との乖離が拡大している。
既存政党への不信も大震災で増大した。とりわけ、原発危機と被災者支援にもたつく政権政党への有権者のいらだちは募るばかりで、民主党は敗北。その受け皿となったのが地域政党だ。橋下徹大阪府知事の「大阪維新の会」と、河村たかし名古屋市長の「減税日本」が議席を伸ばした。独自政策を掲げ、現状変革を訴える姿勢に支持が集まった。
しかし、二つの地域政党には勢いと路線の違いが生じている。名古屋市外の選挙区や静岡市長選、長野県議選などに公認候補を立て、全国政党への転換を目論んだ「減税日本」は、市外への支持拡大とまではいかなかった。
これに対し「大阪維新の会」は大阪府議選で57議席を獲得し、過半数を制した。大阪市議選では目標の過半数(44)に届かなかったものの33議席を確保し、最大会派に躍進した。中選挙区制度(24選挙区ごとの複数定数)の大阪市議会で一会派が過半数を制するのは、至難のこと。それでも橋下知事は大阪市議選を「敗北」とし、掲げてきた大阪都構想について「いったん白紙」と表明した。
大阪都構想は、大阪市を特別区に分割し、大阪府を都に格上げする。そのうえで、大阪市が持つ権限とカネの一部を大阪都が握り、指揮官と財布を一つにする構想だ。橋下知事は沈滞した大阪を再生させる画期的な構想だと主張し、大阪市長と激しく対立していた。
その構想の白紙化発言の真意は何なのか。狙いは、11月に予定される大阪市長選と見られる。都構想の実現には乗り越えねばならない制度上の壁が多く、時間がかかる。市議会内の基盤の強化に成功した橋下知事は、大阪再生を旗印に市長選に自ら打って出るのではないか。浪速のプーチンである。
最も注目を集めた東京都知事選は、いつもの「後出しジャンケン」に「後引きジャンケン」も加わる異例の展開となり、結局、石原慎太郎氏がそのまま圧勝し、4選を果たした。
その石原都知事は2020年夏季五輪招致に言及している。東京都は2年前に16年夏季五輪招致に失敗したが、どうやら五輪開催を震災復興への励みの一つとし、また、復興した姿を各国に示し支援への感謝を表す機会にもなるとの考えのようだ。同じく20年夏季五輪の招致を模索していた広島市は旗振り役の市長が引退し、その後継候補を退けた新市長は招致撤回を表明している。五輪構想は波乱の種となりそうである。
(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 相川俊英)