後日、藤沢園長が改めて社長を訪ねてきた。子供たちの安全のために、今年の冬から床暖房にしたいという。「今からでも工事は間に合うだろうか?」という相談だった。

 幼稚園の冬休みの期間を利用して、「大至急で工事」をすることになった。そのほか、老朽化している水回りの工事をすべて引き受けることも決まった。これだけで、「かなりの売上」になる。

 結果、田中エナジーの社員全員が、今までで一番多い額面の「ボーナス」が支給されることとなった。そうじをはじめて9ヵ月、売上が上がり、お金が手に入ったのだ。そして、圭介は、ほとんど毎日のように淳子との「打ち合わせ」に追われるようになった。

 そして、「クリスマス・イブの夜」、2人は初めて食事に出掛けた。

 …年が明けて早々のこと。昼の休憩のときに正平が圭介に話しかけてきた。

「リーダー知ってました? 公園の近くで、ずっと工事をしていたじゃないですか。あの建築中の建物って、ホテルなんですってねぇ。この夏にはオープンらしいですよ」
「へぇ、そうなの」

 

 圭介が、あの老人に会うきっかけとなったのも、「その工事」があって、迂回をしている途中で、公園を突っ切って近道をしようと思ったからである。そう考えると、「その工事」自体にも、なにかの縁を感じていた

「それでね、リーダー。今日の新聞にね、そのホテルのことが載ってるんですよ。ほら、コレですよ…」

 差し出された新聞を見て圭介は思わず息を呑んだ。あの老人の写真が大きく載っていたのである。それは誰もが知る「ホテルグループ」だった。創業者で会長という肩書きが、写真の下のプロフィールに躍っていた。

「どうしたんですか、リーダー。ねえ、リーダー!」

 圭介の頭の中では、あの老人、いや「会長の言葉」がぐるぐると回っていた。

「拾った人だけがわかるんじゃよ」

 

「第1話・完」
(※この続きの「第2話」、「第3話」は、下記の『なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?』でお楽しみください)

 


『なぜ「そうじ」をすると人生が変わるのか?』

 


 


 

 

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