「例外措置」が実は
小さな店を追いつめる

 原因は、「例外規定」というゆるいルール設定をしたことで、受動喫煙対策全体がナメられて機能しなくなる、という問題が起きてしまってまったことにある。

 そのあたりは「科学的見地から―政策のために:ドイツがん研究センター、ハイデルベルク飲食店業における非喫煙者保護の「スペインモデル」:失敗した手法のモデル」(日本禁煙学会雑誌 第5巻第1号 2010 年(平成22年)3月10 日)というレポートに詳しいので引用させていただこう。ちなみに、OCUというのは消費者団体のことだ。

《OCU調査によれば、小規模飲食店の所有者の21%が法律で定められた「喫煙可」のステッカーをドアの外側に貼る手間さえ惜しんでいた。若者向けディスコで現行の全面的禁煙がどの程度まで遵守されているかを他の消費者保護団体が調査したところ、60%の店が法律に違反していることが確認された》

 つまり、スペインでは規制がゆるすぎて守らない店が続出、法律を機能させるために必要な「平等性」を著しく欠いてしまったことで、形骸化してしまったのだ。こういうシステムエラーが見受けられる制度を日本に導入したところで、スペインと同じ轍を踏む恐れが高い。

 さらにもう1つ、「例外規定」を設けると、ほぼ確実に引き起こされるであろう深刻な問題がある。小さな店を例外にすると、彼らの経営を助けるどころか、あべこべに経営難に追い込んでしまうという事実だ。

 たとえば、もし渡邊さんが言うように、「10坪以下の飲食店を規制の対象外」にしたら短期的には「喫煙者バブル」で、その小さい店は大にぎわいをするだろう。しかし、残念ながらこの「バブル」はすぐにはじけてしまう。

 喫煙者で賑わえば賑わうほど、小さな店の店内は煙の濃度が高くなる。そこは、最新のエアカーテンでという声もあろうが、そういう設備投資をする余裕がないからこその「例外」措置だ。国や自治体が補助金を出せばいいという人もいるが、その莫大な税金をどこから捻出をするのかという問題もある。

 そうなると、この小さな店は喫煙者にとっては煙モクモクのパラダイスだが、非喫煙者にとっては苦痛以外の何物でもない。一方、「小さくない飲食店」では受動喫煙防止対策をしているので、そちらが普及をしていけばいくほど、その環境に慣れた非喫煙者には、「小さい店」のハードルは上がっていくという悪循環に陥る。

 中長期的には、その小さな店の「味」や「雰囲気」にひかれて通っていたような非喫煙者でも、次第に足が遠のいていくのは間違いない。