夏の首都圏の電力需要は、ピーク時でおよそ6000万キロワット前後と見込まれている。これに対して大震災で大きな痛手を受けた供給サイドは、東電が懸命に供給量を積み上げてはいるものの、現時点では5000万キロワット前後がせいぜいではないかと見られている。すなわち、約1000万キロワット、率にして15%程度の需給ギャップが存在しているという計算になる。
需給ギャップを埋めるためには2つの方法がある
電力の需給ギャップについては、供給量を短期間に増やすことはそう簡単にはできないので、停電を避けるためには需要サイドを調整(節電)する必要がある。そして、そのためには大別して2つの方法がある。
1つは、市場を活用する方法である。平たく言えば、たとえば今年の夏に限って、電力料金を値上げするやり方である。要するに価格メカニズムを介して需要を減少させるという方法である。
もう1つは統制経済的なやり方である。工場等の大口需要者に対しては電力制限令を発動して節電を強制し、その他の需要者に対しては目標値(たとえば25~15%カット)を設定し、自主規制等を通じて節電を達成しようとするものである。
前者については、あれほどの大事故を起こした東電に安易な料金値上げを認めてよいのかという素朴な感情論が必ずつきまとうため、あまり声高に主張する人はいないように見受けられる。しかし、少し冷静に考えてみると、東電に対する責任追及の問題と、今年の夏の電力の需給ギャップを調整する問題はまったく別個の問題であることは自明ではないだろうか。供給サイドにボトルネックが生じて受給ギャップが確実に存在する中で値上げを図ることは、需要サイドに強い節電のインセンティブをもたらし、かつそれが中長期的に見ればイノベーションにつながっていく。このことは、2度の石油ショックを通じてわが国経済が身を持って経験したところである。