私はサラリーマン生活を20年経験しました。若い頃は、たとえば「病気になるのも仕方ない、人間なんだから」と思っていました。「風邪引いて休むのは労働者の権利だ」というくらいに感じていたのです。実際、風邪で会社を休めば、誰かがその穴を埋めてくれたものです。あるいは、埋める必要もないほどの小さな穴だったのかもしれません。もちろん、自分も逆の立場であれば、仲間の穴を埋めようと思っていました。

 しかし、独立をすればよくわかりますが、自分が空けてしまった穴は誰も埋めてくれません。誰も助けてくれない、というよりも助けようにも助けられないことが多いのです。自分が一流のプロであればあるほど、空いた穴は大きく深く、誰も埋められないのです。

キャスターで
失敗した健康管理

 NHKでニュース番組のキャスターをしていた時のことです。一度だけ、大変な事態になったことがありました。メインキャスターであった私と、同番組のもう一人のキャスターが、二人同時にインフルエンザに罹ってしまったのです。

 インフルエンザですから、無理をして番組に出るということもできません。休むしかないのですが、生のニュース番組において、これがどういうことを意味するかといえば、MC不在という最悪の危機を招く事態であるわけです。

 もちろん、NHKという組織ですから、危機管理はできています。一人は仲の良かったベテラン解説委員が、もう一人は先輩アナウンサーが何とか穴埋めをしてくれました。しかしそれで、めでたしめでたしではありません。土下座して感謝し、謝りたい気持ちになったのは言うまでもないことですが、二人同時に休むという事態を招いた責任があります。実際、インフルエンザに罹った時点で大罰点なのです。何が何でもインフルエンザなどに罹ってはいけないのです。

 それを理不尽だと思うでしょうか?そうかもしれません。しかし、プロに要求されることはそもそも理不尽なのです。プロフェッショナルは理不尽まで背負ってプロフェッショナルだといえるのです。

 もちろん、プロであっても時には失敗もします。病気にもなります。ただ、どうやったら病気にならないかを真剣に考え、予防管理を徹底する、たとえばどうすればインフルエンザに罹らないかを真剣に考えて、防御策を習慣化にする責任があるのです。

 時々、「どうせ効かないから」といって予防注射をしないと公言する人間に出会います。そういう人間を私は許せません。「あなたがもしそれでインフルエンザに罹って、それを人にうつしたら、どう責任を取るつもりか?自分の仕事に穴をあけても平気なのか?」と問い詰めたくなります。