営業は数字だ。
営業の人はそう言うだろう。大型案件を受注した営業が社内でヒーロー、ヒロインになるのはどこの会社でも同じだ。
しかし、営業が案件を決めた後の工程を担当する立場から言えば、たとえ数字を上げていても「もうあの人とは二度と仕事をしたくない」と思う営業はたくさんいる。
営業先でできもしないことを「できる」と言ってきた揚げ句、後工程の担当に「お客様の要望なのだから何が何でも実現しろ」とすごむ人。後工程の仕事内容と役割分担および工程イメージがまったくないにもかかわらず、「その納期で十分に実現可能です」と胸を張ってウソをついてくる人。顧客が求めるものを正確に把握しておらず、当てずっぽうで提案書や企画書を書かせたことによって失注しても、書いた人の能力不足のせいにする人など。ひどい営業は数限りなく見てきた。
このような営業担当者が仕事やプロジェクトを主導すると、予期せぬ突発的な残業を増やし、顧客からのダメ出しによる大幅な手戻りが起こり、納期に無理矢理間に合わせるための計画の組み換えと突貫工事が必要になるなど、余計な仕事が増える。たとえ売上は上がっても実質的には儲からないどころか赤字プロジェクトになっていることが多い。
そのような“失敗”にもかかわらず、営業当事者の多くは、糾弾から身をかわし、その責任をプロジェクトの運営を司るプロマネージャーや後工程を担当するコンテンツ制作者などの能力の問題にすりかえてしまう。
さすがに、長期雇用が前提となっている一流企業だと、縦横斜めから複数の人がその営業担当の生きざまを見ているため、やがて悪評が付きまとうようになり、次第に居場所がなくなってくる。しかしながら、人材の流動性が激しく、採算性の測定が甘いベンチャーや一部の外資系企業などでは、こういった明らかに疑問符のつく営業担当者が大きな顔でのさばっている。そして、意外にもその如才なさで見事に出世を果たしているのだ。