元祖飛行犬写真家の的場さんと愛犬のスカイ。飼い主と犬との関係が飛行犬撮影における大切なポイントだという

 ところで、飛行犬は、どのようにして生まれたのだろうか。

 南あわじ市で生まれ、東京工芸大学(旧東京写真大学)で撮影の技術を学んだ的場さん。卒業後は島に戻り、10年ほど写真館に勤務した後、取引先の観光施設を運営する会社に転職、バブル景気に沸く島のリゾート開発事業などに携わった。それから10数年を経て写真の世界に戻り、2004年、ペットブームによる需要の増加を見込み、島で犬専門のスタジオを開業、お座りして静止した犬の写真を撮影するようになった。

 翌年には現在の場所にスタジオを移設してドッグラン併設の撮影所を開設したものの、客はさっぱり来なかった。わざわざ島に来なくても、ドッグランもスタジオも、大阪や神戸にあったからだ。「他でできないことをやるしかない」。そこで思いついたのが、ドッグランで遊ぶ犬の撮影だ。

 プロ野球や野鳥の写真を撮るのに使う400ミリの超望遠レンズを購入し、ドッグランを走る犬を追いかけた。そんな中でたまたま撮れたのが、ミニチュアダックスが空をかける瞬間だったのだ。飼い主も「いいですね」と喜んでくれた。「これでいこう」。その姿を「飛行犬」と命名し、商標登録もした。

年に1度、前年に撮影した犬たちの写真集も発行している

 それからは、来る日も来る日も当時の愛犬、コーギーの「タイム」を相手に練習を重ねた。広告を出さない代わりに、100~200枚の撮影データをDVDにコピーし、撮影料金とは別に1枚3000円(現在は3500円)で「自由に使ってください」と飼い主に渡した。飼い主がインターネットのブログなどにアップした写真が評判となって広まり、全国から問い合わせが寄せられるようになったという。

 島外での撮影会も多くなり、沼田さんと2人では対応できなくなったため、各地に支部を作り、協力してくれるカメラマンを増やしていった。2016年には、埼玉県幸手市に東日本本部を開設。17年2月現在、飛行犬を撮影するカメラマンは、的場さんや沼田さんを含め全国に約15人いる。

 的場さんによると、暖かくなるこれからの季節は、良い写真が撮れるチャンスだという。南あわじ市の撮影所は完全予約制で、入場料金とワントライ撮影料金で犬1匹につき2000円(人間は無料)。3月下旬には神戸市で、4月初めには兵庫県高砂市でも撮影会を開催する予定だ。

(ライター・南文枝)

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