日本が目指すべきは
脱亜入欧から連欧連亜への道

──今やアジアの中心は中国です。ただ、南シナ海で見られるように、中国は既存の国際秩序への挑戦者であり、とくに安全保養の面では膨張主義を採る「脅威」だと、日本では喧伝されています、この点をどうお考えですか。

 確かに中国の南シナ海での行動や国防費の急伸から、中国“膨張主義”論を引き出すのは容易です。しかしそれを、既存国際秩序への挑戦と捉えるのは短絡的です。中国の国防費は、対GDP比で2%以下で、4割近くは人件費で、兵器は貧弱です。南シナ海での領有権争いについては、それぞれの国に応分の言い分があります。日本が中、韓、露と抱えている領有権争いと同じです。

 しかし中国の急激な経済発展と、米主導の軍備増強と緊張激化が、中国権力層内部で軍部の発言力を強めています。しかも軍と資源エネルギ—産業とが中国流の軍産複合体を形成しつつあり、軍拡の動きを引き出しています。

 ただ、それに対処するためとして日本が、米韓とともに軍拡予算を増やし米国製高額兵器を購入し、武器輸出に乗り出すべきではありません。周辺諸国との軍拡競争は一触即発の危機を生み、民生ものづくり生産力を衰微させていきます。

 日本が進めるべきは、むしろ南シナ海や東シナ海で漁業資源や海底ガス田の共同開発体制をつくり上げることです。それは、中国の軍拡への抑止力になります。軍拡競争のマイナスサム・ゲームを共同開発のプラスサム・ゲームに切り替え、ウインウインの関係をつくり上げていくべきです。

『アメリカ帝国の終焉』
進藤榮一
講談社現代新書
821円(税込み)

──安倍政権は政治経済両面で、「トランプファースト=アメリカ最優先」のように見えます。歴史の転換期にある今、日本はどのように対応すべきか。基本的なビジョンと具体的なアプローチについて、お考えを聞かせてください。

 トランプのアメリカ利益第一主義に付き従って、米軍軍事費肩代わりの要請に応えてはいけません。米軍撤退による「力の空白」を日本の軍拡で埋めるのではなく、周辺諸国との平和共生体制の構築を進めることです。

 トランプの「取引」外交戦略下で、アメリカに擦り寄り、TPPに代えて日米FTA交渉を進めることは、日本経済が米国流自由貿易の罠に落ちて衰退を進めることになります。むしろ「ASEAN+6」を軸に持続可能な自由貿易体制をつくり、地域力と民力とを強めていくことです。RCEP(東アジア包括的経済連携協定)の推進です。デファクトの地域統合を、低炭素環境共同体や、ロシアやモンゴルを含めたアジアスーパーグリッド構想など資源食料エネルギー共同体の構築へつなげていくことです。日米軍事安保による同盟絶対主義ではなく、同盟の相対化です。脱亜入欧論から連欧連亜への道です。EUやアジアと連携を強めながら、AIIBに参画し、ユーラシア不戦開発共同体への道をつくることです。

しんどう・えいいち/1939年北海道生まれ。京大法卒。同大学院を経てプリンストン大学、ハーバード大学研究員など歴任。筑波大学教授、早稲田大学客員教授などをへて筑波大名誉教授、国際アジア共同体学会会長、一般社団法人アジア連合大学院機構理事長。著書に「アメリカ 黄昏の帝国」、「アジア力の世紀」、「分割された領土」(ともに岩波書店)、「東アジア共同体をどうつくるか」(筑摩書房)、「現代アメリカ外交序説」(創文社、吉田茂賞受賞)など。