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ソニーに何が起きたのか――ハッカーとの暗闘の末に史上最大規模の個人情報流出

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第143回】 2011年5月3日
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 じつはソニーは今年1月、あるハッカーを提訴している。名前はジョージ・ホッツ(George Hotz)。アメリカ東海岸在住で、ハンドリング・ネーム「geohot」として知られる弱冠21歳の若者だ。

 ホッツは、iPhoneを指定の通信キャリア以外でも使えるようにする「ジェイルブレイク(Jailbreak 直訳すれば「脱獄」、転じてセキュリティホールなどを突いてコンピュータ機器に設けられた制限を外し、開発会社らの認可を受けてないソフトウェアを動作可能な状態にすること)のパイオニアとしてハッカーコミュニティーでは有名な人物だ。今回も、プレイステーションをジェイルブレイクして、お手製のゲームを走らせようとしたことで、ソニーに目を付けられたのだ。

 ここで気をつけたいのは、「ハッカー」とひと口に言っても、さまざまなタイプの人間がいることである。

 共通するのはコンピュータに関する深い知識だが、ただひらすら悪意を持って悪事を働く人もいれば、ネットの黎明期によく見られた義侠心の強い(不正侵入によって、わざとセキュリティホールの存在を知らせる)タイプもいる。あるいは「言論の自由」や「自分のデバイスなのだから、何をやってもいいはず」という信条を持つ人もいる。ホッツは、恐らく3番目のタイプだろう。企業が一般消費者の自由を束縛するのは許せないと考えるタイプである。

 iPhoneのジェイクブレイクはその後、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の対象外となり、違法ではなくなったが、プレイステーションは手を加えて改造すると、今でもDMCAに抵触する。ソニーは、これを楯にホッツを訴えたのである。

 ホッツは、自分の弁護士料を集めようとネットに向かって懇願した。ユーチューブにも動画を上げ、まだ20歳そこそこのあどけない顔で、寄付をしてほしいと懸命に訴えた。これに多くの人々が応え、10ドル単位の寄付をしたが、団結して立ち上がったのは、本連載でも過去に取り上げたあの「アノニマス(Anonymous)」だった。

 アノニマスは、「インターネットの自由」を標榜するハッカーたちの集団である。しっかりとした組織はなく、必要に応じて世界中のハッカーが集まり、自在に組織化される謎の集団である。だが、意図するところは、ホッツと同様、インターネット上の言論の自由や人権の保護であり、中東・北アフリカに吹き荒れる民主化運動でも、体制側のサイトにDDoS攻撃(標的サイトに大量のデータを送信し機能を停止させる「分散型サービス拒否攻撃」)を仕掛けるなど存在感を示している(ちなみに、昨年秋、外交公電を暴露したウィキリークスが大手企業から寄付金集めやサーバー利用のサービスを打ち切られると、ウィキリークス擁護のための「オペレーション・ペイバック」を立ち上げ、それらの大手企業のサイトに攻撃を仕掛けた)。

 彼らは今回もホッツ擁護に回り、ソニーにDDoS攻撃を仕掛けると脅し「オペレーション・ソニー」を宣言。また、一部の役員たちの名前や家族構成などをネット上に流したりして、攻撃を始めたのである。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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