大ヒット中の「シン・ゴジラ」と「君の名は。」。ヒットの理由は、両者で全く違うようです

 この夏に大ヒットした映画というと、「シン・ゴジラ」と「君の名は。」が挙げられますが、この2つの映画は、作品の出来栄えの素晴らしさもさることながら、個人的には、それぞれが今の日本の大事な論点を示してくれているのではないかと思っています。

「シン・ゴジラ」が示した
日本の強み

 まず「シン・ゴジラ」が示しているのは日本の強みだと思います。

 本作の前、2014年にハリウッドがゴジラを映画化しましたが、その制作費は1.6億ドル(160億円)と言われています。それと比べると、「シン・ゴジラ」の制作費は15億円と10分の1以下です。

 それでも、この日本で大ヒットを記録したのみならず、世界の103の国と地域に配給されることが決まっており、米国でも10月に公開予定となっています。

 この映画の成功の要因としては、庵野監督の綿密な取材、東日本大震災や原発事故をメタファーとするなどのリアリティの徹底的な追求などが挙げられていますが、そもそもなぜこれだけ少ない制作費でハリウッドに負けない高いクオリティの映画を制作することができたのでしょうか。

 この点について映画関係者に話を聞いたところ、その理由は、庵野監督のオタク精神を全開としつつも、アニメ的な制作手法の導入など様々な創意工夫を積み重ねることで、制作費の少なさを補ったという点に尽きるようです。

 そう、日本人の強みである、自分が好きなことを徹底的に極めようとするオタク精神と現場での創意工夫が組み合わさって制作の過程で全面的に発揮されたからこそ、制作費が10分の1以下といった不利な条件も克服して、ハリウッドに負けない作品を完成できたのです。

 そして、それは映画の世界に限定されないと思います。日本のレストランのクオリティの高さは世界で有名ですが、客単価の高いハイエンドなところもさることながら、客単価が5000円くらいで高いクオリティの食事を提供するレストランもたくさんあります。

 そういうところほど料理人がオタクで、限られた予算で入手できる食材で最高のものを提供しようと、料理を極めようとするオタク精神と現場の創意工夫を両立しているように思います。

 このように考えると、「シン・ゴジラ」の成功は、日本の強みであるオタク精神と現場の創意工夫の両方をバランス良く発揮させることがいかに重要かを物語っているのではないでしょうか。その教訓はあらゆるビジネスに当てはまると思います。