介護から学び、人間としても成長する
【橋中】私は、ほんとうに至らない人間で、いろいろな仕事をいただいているのに失敗したり、がんばりすぎて体調を崩したり。今回の本でもそうでした。そのたびに助けてもらう嬉しさや、お願いする大切さを学ばせていただいた。そのきっかけが介護だったと思うんです。人に助けを求めなければやっていけないと、はっきりわかりました。みなさんに叱咤激励されながら、こんな私でもやれる。介護を経験したことで人生が豊かになったと感じています。
【落合】今この瞬間をなんとか乗り切らなきゃと、それぞれのときは必死だけどね。
【橋中】でも、がんばってもできないことはできないし、空回りするだけだから、サポートを求めていいんだ。介護を通して、そう気づけたのは大きな収穫でしたね。
【落合】できないことを認めるのは、自分の弱さに気づくこと。ほんとうはそれが、人の強さなんですよね。日本では足りない部分を埋めていってこそ、大人だという思い込みがあるでしょう。そうじゃなくて、ここが抜けています。この部分も穴が開いていますと伝えることも大事です。そうすれば、教育だって変わりますよ。
【橋中】以前は私、“怖い人”だと言われていたんです。完璧を求めすぎるところがあって。でも、自分の弱さを認めると、人の弱さも受け入れられる。できなくても待ってあげられる。教育の場でこそ、必要ですね。
【落合】介護という視点から見ていくと、あらゆる場面に応用できるのよね。
【橋中】つながっていますよね。上に立つ人、たとえば医療従事者だってそう。無用なプライドに固執せず、できないこと、わからないことを認めて、みんなで補いあっていけば、「ここはボクがやる」「これは私がやるわ」と助けあえるのに。
【落合】男性が弱さを出せないのは、「できる」ということが価値だと思っているから。弱音をはかないことが当たり前になっているでしょう。そうじゃなくて、お互いの弱さを認めあう社会をつくっていく。介護はそのステップだと思う。
【橋中】今が、いいチャンスですよね。
【落合】橋中さんのおかげで、うまくまとまりましたね。いい時間をありがとう。
【橋中】こちらこそ、貴重なお話をありがとうございました。