『週刊ダイヤモンド』4月1日号の第一特集は「美術とおカネ アートの裏側全部見せます。」です。日本人は美術が大好き。広義のミュージアムには年間3億人近くが訪れ、美術展には平気で何時間も並びます。しかし、美の世界の裏側にはカネが行き来し、様々なプレーヤーが蠢いているのも事実。お金の流れから作家の生活、歴史から鑑賞術まで全てを網羅しました。

なぜ美術展は大行列かガラガラの両極端なのか?写真は東京・上野の国立西洋美術館

 2017年2月から、草間彌生氏の美術展「草間彌生 わが永遠の魂」が東京の国立新美術館で開催されている。過去の代表作に新作が加わり、270点が紹介される過去最大級のものだ。

 その内覧会のあいさつで草間氏は「わが最愛の作品群を私の命の尽きた後も人々が永遠に私の芸術を見ていただき、私の心を受け継いでいってほしい」と語った。

 その思いを実現するかのように、展覧会の裏側ではある一つのプロジェクトが着々と進んでいた。

 手元に1枚の登記簿がある。そこには17年1月に草間彌生記念芸術財団が設立されたと記載されている。設立の目的に「美術館の運営」ともある。実は、東京にある草間氏のアトリエの隣接地に、美術館がオープンする予定なのだ。

 なぜ、財団設立と美術館オープンを進めるのだろうか。当然、多くの人に作品を見てもらいたいという思いもあるだろう。しかし、作品をアート市場とマネーゲームの餌食にさせないという狙いもありそうだ。日本での財団設立による税制上のメリットは特集で詳しく述べるが、作家の死後に作品が市場に散逸することを防ぐことができる。世界的に名をはせた作家ですら、カネの悩みとは無縁でいられないのだ。