書名を聞いた瞬間閃いた、上下巻対称の装丁
『ブラック・スワン』

 『ブラック・スワン』の話は、結構前からもらっていて。原稿があがってくる3ヵ月くらい前だったと思います。「『ブラック・スワン』というタイトルのものを、上下巻でやってもらいたい」と。その話をもらったときには、すでに頭の中でデザインの原型はできていました。上下巻を白と黒とでデザインし、スワンを対比して見せたらどうか、と。自分でも、カッコよくできたと思います(笑)。

すべては強い印象を生むために<br />装丁家・重原隆氏(後編)上下巻で美しい対称をなす『ブラック・スワン』。ちなみに、カバーを外してもその白と黒の対称は変わらない。
カバーをとった画像はこちら

 当初、担当編集者からは「文芸書っぽいのでは」という反応がありましたが、結局は少々文芸書の香りがしているほうがいいという話になり、採用されました。

 もしこの作品を文芸書としてやるとしたら、こういう平面的な白鳥ではなくて、イラストレーターに白と黒で白鳥を描かせただろうな、と思います。やっぱり、文芸書には文芸書の約束があって、ビジネス書にはビジネス書の約束がありますから。

 あと、上下巻は好きですね。本屋で倍の面積を取れるので(笑)。もちろん、やれることも倍になりますしね。