アイデアの源は、音楽にあり
ジャケットデザインからうけた影響

今回の取材で何度か話に出た音楽の話。重原さんのデザインと音楽の結びつきは強いのだろうか?

 音楽は、今の仕事のヒントになっています。ジャズもロックもクラシックも好きで。楽器は全然できないので、聞く専門ですけど。中高時代は、学校で一番詳しかったと思います。僕の世代はみな、キッス、クイーン、エアロスミスから聞き始めました。ジャズに本格的にはまったのは、社会人になってからです。

 音楽そのものもそうなんですが、レコードのジャケットデザインにもとても影響を受けました。

 例を挙げると、当時ロンドンには「ヒプノシス」というデザイン事務所があって、ピンク・フロイドとかレッド・ツェッペリンのジャケットをデザインしているんです。そこが手がけるレコードジャケットには、今もめちゃくちゃ影響を受けているなっていうのはあります。ヒプノシスのデザインは本当に好きですね。彼らがデザインしたレコードは、今も持っています。

重原さんが影響を受けた、ピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンのジャッケットとポスター。すべて「ヒプノシス」によるデザイン。

 ちなみに、こんな話をあちこちでしていたら、なんとスティングの自叙伝の装丁依頼が舞い込みまして。人生、何があるかわかりません。サイン会が英国大使館で行われたのですが、そこでスティングから「原著よりカッコいいよ」と言ってもらったんです。最高でしたね。

タイトルの見せ方を始めとした重原さんのデザイン哲学と、レコードジャケットという原点の両方に触れることのできた意義深いインタビューでした。次回は、デザイナーの松昭教(まつ・あきのり)さんにお話を伺います。

重原隆(しげはら・たかし)
装丁家。
1962年、東京生まれ。
金沢美術工芸大学を卒業後、デザイン事務所、父保男氏の事務所を経て独立。
年間150冊以上の装丁を手がけ、世に送り出した書籍は1600冊以上。
http://homepage3.nifty.com/shigehara-sotei/