液晶パネルメーカーの先行き不透明感が増している。
家電エコポイント制度が終了する3月末を目前にして東日本大震災が発生し、テレビの国内販売が急減した。また、北米も予想を下回る低調ぶり。頼みの綱の新興国は前年比130%と好調だが、購買欲が旺盛なアジアでは小型ブラウン管テレビの買い替え需要が多く、売れているのは20型台前半のテレビ。先進国の落ち込みをカバーするほどではない。
話題のタブレット端末も、米アップルのiPad以外は売れ行きが鈍い。好調なのは、スマートフォン向けの中小型液晶パネルのみというのが現状だ。
これらの要因が液晶パネルメーカーの業績を軒並み悪化させた。世界最大手の韓サムスン電子の液晶パネル部門は、8四半期ぶりに赤字に転落(2011年1~3月期)。2位の韓LGディスプレイと3位の台湾AUOも2四半期連続の赤字だ。さらに円高要因も加わるシャープは、部材の調達難も重なって、生産ラインをストップし在庫調整をする事態となった。
まさに惨憺たる状況だが、期待がないわけではない。震災の復興需要と地上デジタル放送移行による駆け込み需要だ。だが、「20型台前半の小型テレビがメインになりそうだ」(業界関係者)との見方が強く、安心できる状況にはない。
そこに追い打ちをかけるのが韓国勢だ。「生産調整中の日本勢、台湾勢と反対に、韓国勢は増産する方向」(同)という。ボリュームを稼ぎ、コストダウンを進めるためだ。そのため、3月末に調整された在庫も6月末には再び積み上がる見込みだ。しばらく体力勝負が続くだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)