要約者レビュー
ここ最近、価値観が多様化しているとさまざまな場で語られるようになった。仕事という文脈だけを見ても、Iターンや就農などをキーワードとし、地方への移住を選択する人が増えてきている。
神吉直人
224ページ
インプレス
1500円(税別)
その一方で、「みんなが知っているような大企業で働くことが幸せにつながる」と考えている人は、まだまだ少なくない。しかし、仮に成功するためのルートがそれしかないのであれば、ほとんどの人は幸せに暮らすことができないことになってしまう。なにしろ、国内企業のうち、99.7%は中小企業が占めているのだから。
本書『小さな会社でぼくは育つ』はそうした状況を鑑みて、中小企業に関するポジティブな言説を伝えるために執筆された一冊だ。
大阪にある追手門大学の経営学部で、経営組織論と経営倫理を主に担当する著者は、学生に「中小企業でも大丈夫ですか?」と尋ねられたとき、「そのほうがええで」と力強く即答するようにしているという。というのも、これまでの研究のなかで得られたさまざまな知見や、中小企業で実際に伸び伸びと働く人々が、中小企業で働くことのすばらしさを雄弁に物語っているからだ。
本書に書かれているアドバイスはあくまで実直そのものである。だからこそ、一粒一粒をじっくり噛みしめるようにお読みいただきたい。自分の血肉となる言葉に出逢えるはずだ。 (石渡 翔)
本書の要点
・中小企業は小回りが効きやすく、いろいろなことを経験できるチャンスが転がっている。経営陣との距離が近いことも大きなメリットだ。
・仕事をスピーティに進めるうえで、優先順位をつけることは重要だ。また、優先課題に対しては、一気に覚えたり身につけたりしようと努めるべきである。
・まったく迷惑をかけないように努力するよりも、うまい迷惑のかけ方を考えるほうが、互いにとって有益である。
・ルーティンのメリットは、意思決定コストを下げることだ。そこで生まれた余裕を使って、新たな挑戦をすることが成長につながる。