一般的に中小企業から大手企業への転職は難しいと言われています。それは大手企業が中途採用をあまりしない、あるいは大手企業からの転職組しか採用しないと考えられているからです。ただ、幸運にも中小企業から大手企業に転職した人は少なからずいます。そんな人は、いったい何が理由で転職できたのでしょうか。「幸運」では片付けられないそのワケを、今回は考えてみたいと思います。
大手企業に就職できるかどうかは
生まれた年に左右される?
大手企業の定義は難しいものがあります。誰もが知っている知名度がある、上場しているなど、人によって「大手企業」の印象が違うのも確かだからです。そこで今回は、従業員1000名以上で業界のトップクラス(5位まで)としましょう。こう定義すると、大手企業は、売上では大きなインパクトがあるものの、日本にある会社数のわずか1%にも満たない存在になります。
そんな大手企業に入社して勤務するのは至難の業。ただ、経済環境によっては大手企業に比較的入社しやすい時期もあります。それがバブル景気のような右肩上がりの時期です。大手企業が採用に意欲的になり、1社で1000名規模といった大量の新卒採用や中途採用を行うからです。ちなみにリーマンショック前は、メガバンクは各行とも数千名規模の若手人材の採用をしていました。普段なら入社が困難な学生が「メガバンクに入行できるなんて夢みたい」と喜ぶ声をたくさん耳にしました。ただ、景気が悪くなると状況は一変。いきなり採用数を絞り込みます。この時期に就職活動した人にしてみれば、不公平だと嘆きたくなるのは当然かもしれません。
でも、残念ながらそんな“不公平な時期”はつい数年前にもありました。それがリーマンショック直後の頃です。現在、中小企業の広告代理店で働くEさんは、新卒の就職活動時、大手企業を数多く受けたものの、残念ながら大半は一次面接で落ちました。ちなみにEさん(一流私大卒)は2010年入社で、就活を始めたのはリーマンショック後の特に大学の新卒者の就職が困難になった2008年の後半あたり。2010年卒学生の就職率(文部科学省「学校基本調査」)は60.8%にまで落ち込みました(ちなみに2015年卒では72.6%)。大学卒業予定者だった人のうち、7人に1人が就職留年を選択したほどでした。