なぜ、自民党は
「テロ等準備罪新設法」を急ぐのか

 自民党は今回の法案について、これまでの「共謀罪」と異なるものだと強調してきた。今年1月、自民党は原案を発表し、処罰の対象となる犯罪を「懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪」とし、その数は676とした。

 対象とする犯罪が600を超えていることは、過去3度廃案となった「共謀罪」と何も変わっていない。だが、自民党は、過去の法案とは違うと主張した。「共謀罪」では適用対象としていた「団体」を更に絞り込み、テロ組織や暴力団、振り込め詐欺グループなどを想定した「組織的犯罪集団」に限定するとした。その上、凶器を買う資金の調達や犯行現場の下見などの犯罪を実行するための「準備行為」を、法を適用する要件に追加することで、法律を適用する条件をより厳しくしたと説明した。

 自民党は「国際組織犯罪防止条約」の締結のために、今回対象とした犯罪を「準備行為」の段階で罰する、国内法の整備が必要だとした。「国際組織犯罪防止条約」とは、組織的な犯罪集団への参加・共謀やマネーロンダリング、司法妨害・腐敗(公務員による汚職)等の処罰、およびそれらへの対処措置などについて定める国際条約である。日本以外のG7諸国を含む187ヵ国が締結している条約だが、日本はこの条約を締結していない(未締結はわずか11の国・地域のみ)。

 その理由は、この条約が、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為を処罰する罪(つまり「共謀罪」)を制定していることを加入の条件にしており、国内の「リベラル派」(主にいわゆる「護憲派」)が強く反対していたからだ。

 世界各地でテロが相次ぐ中で、日本は2020年の東京五輪開催などを控え、テロ対策の強化が必要なことは言うまでもない。しかし、インターネットの発達や交通手段の高速化で、国境を越えて組織犯罪が発生するケースが増えている現状で、国際組織犯罪防止条約に未加入だと、対テロ対策の国際的な法の抜け穴を日本に作ってしまうことになる。

 また、テロ対策のための国際協力に十分に参加できず、テロを未然に防ぐために必要な、人身売買、密入国、不正な銃器の売買などの重要な情報を、諸外国と共有できなくなってしまう。このままでは、ビッグイベントを控えた日本は、テロリストにとって格好の標的となるリスクがある。そこで、安倍政権は条約加入の条件である国内法の整備を急いでいるのである。