LGBTへの正しい理解が
“寛容”のスタートライン

「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)」の視点からテレビの世界を俯瞰すると、SNS社会ならではの問題も内在しているのが分かる。

 ある芸能関係者は「タレントの立ち居振る舞いや見た目について、視聴者の目がかなり厳しくなっている」と告白する。SNSでの拡散や掲示板での書きこみで、タレントが矢面に立たされやすい環境になっているのだ。出演者の社会への影響が大きい分、テレビ視聴者における「多様性の受容」は、むしろ以前よりも低くなっていると言えるだろう。

 そんな環境下で、オネエ系タレントたちは大きなハレーション(放送事故など)を生むことなく、世間に受け入れられている。結果、一般社会における「セクシュアル・マイノリティ」の存在を身近にしているように思えるが、実は、セクシュアル・マイノリティのステレオタイプを増長させたり、イロモノ的な印象を高めてしまう危険性もある。

 例えば、「オネエ系タレントとして、女装してテレビ出演するXさん」。実際にはXさんの性自認や性的指向は本人にしか分からないものであり、仮に、自らの性自認と性的指向をXさんが公言しても、それはあくまでも、“テレビ視聴者向け”の可能性もあるのだ。

「オネエ系タレントのXさんはゲイだ。世の中のゲイの人はみんながあんなカンジだ!」

 こうした短絡的な思い込みは、LGBTという言葉(呼称)が一般的になりつつある現在(いま)、当該タレントと視聴者の双方を不幸にしていくだろう。

 バラエティ番組は、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)とおぼしきオネエ系タレントの出演には寛容だが、それが、視聴者に直結しているとは考えづらい。LGBTを含むセクシュアル・マイノリティの人たちへの正しい知識と理解のうえ、テレビ番組の制作者も視聴者も“多様性に寛容であること(ダイバーシティ&インクルージョン)”を心がけるべきだと思う。

(「オリイジン」編集長 福島宏之)

※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン(Oriijin)」の掲載記事を加筆修正したものです。