実際の書店は
肉体労働の現場でした
――最初の一年は大変だったんですね。
上坂 あと、新刊の多さにもびっくりしました。昔から本は好きでよく読んでいましたし、書店にも時間があるとよく入っていたので知っていたつもりでしたが、こんなに多いとは。だから、書店って、肉体労働の現場でした。
――僕らが作りすぎちゃってスイマセン。
上坂 いえ、そんなことないです(笑)。でもこんなに体を酷使する仕事とは想像していなかったです。もともとスポーツ派ではなく、どちらかというとインドア派だったんで。仕事って見た目と実際はかなり違うものなんだな、って他の仕事についても想像しちゃうようになりました。
――接客は戸惑いませんでしたか?
上坂 接客も初めてだったんです。それまでコンビニとかでも接客経験もなかったんです。しかも私のそれまでの生活で、自分よりはるかに年上の人と話すような機会ってあまりありませんでした。それが、お客様は自分よりもはるかに年齢が上の方だったりします。もう年配のお客さんから声をかけられるだけで、アップアップでした。だから言葉遣いから先輩の店員さんに教えてもらいました。
言葉遣いもそうですが、お客様が探している本の書名を言われるのがまた怖かったです。その頃は、本の名前聞いてもジャンルがさっぱり見当つかない頃でしたから。だから当時は、お客様から書名を言われたら、ひたすら先輩のところに聞きに行くということを繰り返していました。
――専門書だと、知識の豊富なお客さんが多そうですね。
上坂 そうなんです。こちらは書名を聞いても漢字が頭にすぐ浮かばないですし(笑)。お客様も、とろい店員だなっと、イライラされていたんじゃないでしょうか。いま思えば申し訳なかったです。
――でも真面目な姿は見てもらえていたのではないですか。その後は、どういう担当だったんですか?
上坂 人文書を全般に見ていたのは5年くらい。その後、法律書を任されるようになりました。それから就職本なども見ていました。ビジネス書担当になったのは、今年で4年目です。担当といっても、上に見てくれている人がいて、私が自由にやらせてもらっていたんです。
―― 法律書って、特に難しくないですか?
上坂 そうですね、担当になってとき、まったくわからなかったから、民法とか憲法の入門書を読んでみました。そうするとそれまでなじみのない分野でしたが、私はこういう世界嫌いじゃないかもって思いました。正義感が強いのか、どっしりした内容の本って好きな線です。ビジネス書でもそうですけど、定番書が好きなんです。法律書はそういう意味で硬派なところは、私の相性に合いました。