韓国とアメリカに共通する
「感情的正義」
朴前大統領の弾劾が行われた韓国では、次の大統領選に向けて候補者のつばぜり合いが行われている。
朴前大統領は就任以来、比較的高い支持率を堅持していた。就任直後から50%台後半から60%台前半を推移し、「空白の7時間」が問題となったセウォル号事件直後でも46%までしか落ちなかった。その後、中国との蜜月外交と再選挙、補欠選挙で与党が勝ったことから、支持率はまた50%台に持ち直した。
ところが、2016年10月に、大統領の友人である崔順実の国政介入問題、いわゆる「崔順実ゲート事件」が起こると支持率は一気に急落し、11月初頭には5%までに下落した。伝統的な左派地盤である全羅南道に限れば支持率は0%だった。
その後、大統領弾劾の機運が高まり、ソウルではいわゆる「ろうそくデモ」が起こり、あっという間に弾劾が決まった。その後も、大統領に対する世論の風当たりは止むことがなく、現在まで続いている。
弾劾が決まった時、また大統領が逮捕された時、韓国のテレビ局が流すニュースやネットでは、市民の「正義が実行された」「大統領といえども、過ちを犯すとこうなる」といったコメントであふれた。
しかし、大統領が実際にどれほどの罪を犯したかについて、客観的で冷静は報道をほとんど見かけない。本当に「正義」を求めるならば、そのような検証が必要だと思うのだが、少なくとも筆者の知る限り、本格的にそういった議論がなされるのを見たことはない。
一方で先日、アメリカがシリア爆撃を決定し、すぐさま実行に移した。アサド政権下にあるシリア政府が化学兵器を用いたというのが理由だ。その兵器は、サリンガスと推定される。1995年にオウム真理教が東京都内地下鉄テロ事件で用いた毒ガスなので、知っている読者の方々も多いだろう。
トランプ大統領は多くの子どもたちが化学兵器の犠牲になったことを「人道への侮辱」として、直ちに攻撃に踏み切った。米中首脳会談の最中だったにもかかわらずだ。
そして、大統領の決断は、アメリカ国内ではおおむね支持されているようだ。かのクリントン氏さえ支持しており、「これでトランプは真に米国大統領になった」という声も聞かれるくらいだ。