経済低迷で不安強まるフランス
2大政党への批判、極右、極左に支持

 実はフランスにおいては英国や米国以上に反グローバリゼ―ションやポピュリズムが力を持ちうる余地は大きい。経済は長期低落しており、フランスの失業率は10%(米国や英国では5%内外で推移しているのに対し)、25歳以下の若年失業率は25%に達している。フランス人ほど将来に対して悲観的に見ている国民はいないと言われる。欧州の中でイスラム人口が最大であるのはフランスである。過去1年半の間に大規模なテロ事件が3回も発生し、大統領選挙は非常事態宣言下の選挙となる。

 極右のル・ペンや独立系中道のマクロン、極左のメランションの躍進と対照的であるのは、これまでフランスの政治を担ってきた共和党、社会党という2大既成政党の不振である。このような2大政党に対する体制批判票は、時の経過と共に態度未定の3-4割の有権者にも浸透していく可能性は大きいと見るべきであろう。

 ただ仮にル・ペンやマクロンが大統領選挙で勝利してもル・ペンの国民戦線は議会で現有議席はわずか2議席、マクロンの「前進!」という政党に至っては現有議席ゼロであり、6月の国民議会選挙で定数577議席の過半数を占めることなど到底考えられず、行政については既成2大政党の力は引き続き大きい。ル・ペンの場合には反EU、反移民の姿勢が明確であり議会との対立は避けられない一方、マクロンの場合には欧州統合推進を掲げた中道勢力であり、議会との協調は比較的容易であろう。

 ル・ペンが勝利した場合には欧州の秩序は大きく変わるのだろう。ル・ペンは、ユーロの使用を禁止する、EUからの離脱に関する国民投票を就任半年内に実施、移民流入数を80%削減する、域外との自由貿易協定を廃止し、NATOから離脱するといった相当排他的な公約を掲げている。もちろん国民議会の構成次第でル・ペンの公約は実現困難となることも予想されるので、不透明な状況が招来されよう。ただ、欧州では既に英国、オランダ、オーストリア、ハンガリー、ポーランドなどで極右ナショナリスト勢力が大きく台頭してきている。これらの勢力は勢いを得てEUは分裂と崩壊の危機に瀕することとなる。

 一方、マクロンは欧州統合の推進、保護を必要とする難民を歓迎、域外との自由貿易協定を支持するなどの公約を掲げており、勝利した場合には反EU、反移民の流れは当面止まり、(9月の総選挙の結果如何にもよるが)ドイツと共にEUの再建に向けて動き出す可能性が強い。おそらくBrexitについても欧州の混乱を回避していくという方向性が出てくるのではないのだろうか。現時点で最有力なル・ペン、マクロンの主張は対称的であり、どちらが勝利するかによって欧州の流れは違う方向に大きく変わりそうである。