見世物としては興味深かった――。
「事実は小説より寄なり」の不信任案騒動

 自民党や公明党が、震災対応の遅れなどを理由に、菅政権に対して内閣不信任決議案を突きつけた。採決直前まで、与党である民主党内部からも不信任案に賛成する動きがあり、情勢は緊迫していた。

 ところが、採決の当日になって、菅首相が「東日本大震災への対応に一定のメドがついた段階で退陣する」と発表したことで、何とか不信任案否決に持ち込んだ。

 しかも、不信任案否決から半日しか経たないのに、否決劇の当事者である鳩山氏と菅首相の間で言い分が食い違うことが明らかになった。鳩山氏は、菅首相を“ペテン師”と激しく非難し、一方、菅首相、岡田幹事長は、「そんな約束はしていない」という。国民は、完全に蚊帳の外に置かれたままだ。

 一連の出来事は、まさに“小説より奇なり”だ。見世物としては大変興味深い。しかし、これが、自分たちの国の最高責任者たちの間で起きていることを考えると、暗澹たる気持ちになる。

「いったい、この国の政治はどうなっているのか」と声を上げたい気分だ。いまだに、避難所生活を強いられている人々からすれば、何をかいわんやだろう。

 我々にとって悲劇はそれだけではない。これから、いったん退陣を表明した菅首相が、この国のリーダーとして居座ることになる。それで本当に、この国のマネジメントができるのだろうか。

 大震災の復興、財政の立て直し、外交問題など多くの課題を抱えて、今まで遅々として進まなかった政策運営が、今後様変わりすることは期待できない。

 ロンドン在住の日本通の友人は、「誠実で、勤勉な日本人のリーダーが、何故あんな人しかいないのか不思議だ」と言ってきた。何故なのか、考えてみたい。