高齢化率が20.6%という上海市

 中国全体の高齢化率は10.5%、2025年に14%の高齢社会に達すると見られている。対策に乗り出すには早いようだが、経済成長が著しい沿岸部の大都市では様相は一変する。

 上海市が3月27日に発表した人口統計によると、2016年3月末時点での戸籍人口は1450万人で、65歳以上は299万人、高齢化率は20.6%とかなり高い。

 上海の街の人たちを見ている限り、これほどの高齢化は感じられない。というのも、上海には上海人である「戸籍人口」のほかに、地方から仕事を求めてやってきて居着いた「流動人口」がほぼ同数いる。その人たちは若年層が多いため、街の印象からは高齢者問題はさして感じられない。

 地方出身者が病院で診察を受けると、診察料は全額支払わねばならない。戸籍のある故郷に戻った時に、医療保険を使って精算する。医療保険は戸籍所在地に留め置かれており、制度上は上海人ではないからだ。

 高齢化率が20.6%という上海市の状況は相当に深刻である。高齢化率が世界一早い日本と比べると、東京都の高齢化率が20.4%だったのはほんの7年前の2010年だった。

「介護へのニーズがかなり広がっている」と上海市の担当者が話すのも当然だろう。上海市内の高齢者施設は702カ所、全ベッド数は13万2000。これからは、「地域に密着した小さな規模の事業所作りに力を入れたい。住宅地の中で訪問介護を拠点とし、デイサービスやショートステイも手掛ける形にしたい」と話す。

 施設づくりと並行してこうした在宅サービスの拡充を目指さざるを得ない。それほど介護需要が高いということだろう。

 実は、昨年9月時点の東京都の高齢者人口は301万2000人で上海とほぼ同数。この4月時点で東京都内の入所系高齢者施設(特養、老健、療養病床、有料老人ホーム、グループホーム、養護施設、ケアハウス)の総定員は13万2430人。上海の総ベッド数13万2000とほぼ同数である。

 といっても、上海での高齢者施設の定義、内訳などが十分に把握できないので厳密な比較はできない。それにしても、介護保険制度で施設が急増している東京とさして変わらない状況は意外だ。それだけ上海で施設開設が急ピッチで進んでいると言えるかもしれない。