体制整備も急がれ、その出発点として上海市ではこの1月から介護保険制度を市内の3つの区で始めた。医療保険制度を拡大したもので、65歳以上の医療保険加入者が利用者となる。

入居率の高い介護施設

 在宅介護の新しい動きを前回触れてきたが、今回は施設介護の現状を見て行こう。

紅日家園老年公寓の2人部屋

 上海市の北部、虹口区。小さな商店が道路沿いに並び、下町の雰囲気だ。広い道路わきに「宝貨(化の下に十)城市花園」(BaohuaCityGarden)と大きな看板が目を引く。小道に入ると9棟のマンションが整然と建つ。そのGardenの中の9棟目が目指す有料老人ホームである。玄関には「紅日家園老年公寓」(Hongri Apartments for the Elderly)と表示されている。

 12階建てマンションからの再活用で、入居者は122人。運営する上海紅日家園企業管理有限公司(紅日家園)が2012年に開いた。

「家庭的な雰囲気づくりを心掛けています」と社長の陳琦さん。確かに、入居者の居室は木目調で、木のベッド横の収納具も茶系。テーブルの植木鉢には観葉植物の緑が鮮やかで、窓際には籐椅子も。ベッドは自宅で使われるタイプということもあり、病室とは異なる温もりが感じられる。

「向かいのマンションと同じような部屋になっているはず」と強調する。各フロアごとのデイルームや廊下の壁紙も異なる色調にした。

 2階のフロアでは、ちょうど30人ほどの入居者たちが合唱の最中だった。自立に近い人がほとんどで、91歳の女性は、促されてマイクを手に暮らしぶりを話す。

「5年前に入居しましたが、毎日をとても楽しく過ごしています。週のうち4日はこうして歌を歌いに来ます。午後は麻雀を2時間半。絵を描くこともあります」と、しっかりした口調で語る。

 陳さんはアイデア豊かなことでも知られる女性社長。「館内でファッションショーも開きます。スタッフがプライドを持って仕事ができる環境作りが大切だと思う。スタッフの幸せを第一に考えています」。

 とかく画一的で病院のような内装になりがちな中国の老人ホームの中にあって、この紅日家園の発想はかなり違っている。それが、従業員の離職率を下げることにつながっているようだ。

 利用者や周辺住民にも好評のようで、入居率も高いという。上海とその近郊で5ヵ所の老人ホームを運営、さらに蘇州と南京にも進出している。