深堀プロに話をうかがったのは、まだ冬の真っ只中である2月の中旬だった。アジアでの戦いを終えてからまだ日が浅いこともあり、うっすらと日焼けした姿は、開幕のまだ2カ月近く前だというのに、とても精悍な印象を受けた。そして、このインタビューの2日後には、約1カ月に及ぶハワイ合宿に向うのだという。
そんな忙しい合間を縫ってのインタビューにもかかわらず、まず最初にこちらが切り出した質問は”いろんなスイング理論が雑誌に載ってますが、間違いないものってあるんですか?”ということだったのだが、丁寧に応えてくれた。
1968年、東京生まれ。フォーラムエンジニアリング 所属。高校2年時に『日本ジュニア』を制覇。明治大学を経て1992年プロに。97年『シャストシステムKSBオープン』で初優勝。以後、2003年の『日本オープン』をはじめ8勝をあげる。07年、10年には選手会長を務めツアーの発展に尽力。今年は生涯獲得賞金25位以内の資格を行使。復活を期する。
一番大事なのは、
どう握るか、どう立つか、ということ
「たとえば月刊誌だったら年間12の理論が載るわけですから、どれが自分に合うのか、探すのは難しいですね。それを全部やってしまうと、自分がもともとやってきたことを忘れてしまって、ある種の迷いに入ってしまって、元に戻ろうとしたときには、戻れなくなってしまうということがあるので」
深堀プロ自身も苦しんだ時期があったという。それは最初の頃、教えてくれるのは自分より年上で、ゴルフの上手い人たちだったので、言ってくれることはすべて正しいと思って、それをすべて受け入れてしまったのだ。それでスイングがバラバラになってしまったのである。
「まず、基本ができてることが大前提なのですが。それで一歩出てみて、あわなければすぐ戻る、ということを繰り返していく中で、要らないものを捨てられるようになって行くんです」
では、基本とは何か?
「いろいろあるんですが、一番大事なのは、どう握るか、どう立つか、ということです。クラブとの唯一の接点がグリップですから、これを大事にしないとスイングはブレます。それからアドレス。何を隠そう、アドレスに入った瞬間に、どれ位のレベルかがわかってしまうんです。アドレスという基本は、静止しているので自分でも直せる唯一のものでもあるんです。鏡を見たり、スマートフォンで撮ったりして、正しく立ててるか、ということを確認する作業というのはとても大事だと思いますね」
そうやっていると、上手い人とどこが違うのかということを探しはじめるようになる。そして、お手本にするのは上手な女性ゴルファーやジュニアゴルファーにすべきとのこと。
「大人になってからはじめると、どうしても飛ばしたいので力任せになります。強いアウターの筋肉を使うと、どうしても形が悪くなる。リズムもすべてが崩れやすくなる。スイングをつくっていくなら、まず鈍感な筋肉というか、裏側の筋肉だったりを使います。それも急に力を入れるのではなく、徐々に加速していくような感じで。まずそちらから覚えて、その後、力のものがマッチングすると一番いいんですけど」