「パチンコで生活保護停止」が物議を醸した別府市の意識改革はいま?別府市役所は、市街地を見下ろす高台にあり、近隣には美しく整備された公園もある

当たり前か、それとも人権侵害か?
別府市「生活保護とパチンコ問題」の今

 2015年末、大分県別府市の市議会質疑を通して、福祉事務所の生活保護ケースワーカーたちが、同年10月の1ヵ月間、市内の13軒のパチンコ店と市営競輪場に生活保護で暮らす人々が出入りしていないかを調査(以下「パチンコ等調査」)し、指導に応じず出入りを続けていた人々に対して、生活保護を中断する処分(1~2ヵ月にわたる生活費分の減額)も行われていたことが判明した。またこの調査は、過去25年間にわたって続けられてきたことも明らかになった。

 別府市に対しては、「とんでもない人権侵害だ」という批判がある一方で、「生活保護でパチンコなんて、とんでもない、よくやった」という賞賛もあった。しかし、厚労省・大分県が「不適切」としたため、2016年以後、パチンコ等調査と処分は行われないこととなった。

 賛否とも大きな話題を呼んだ別府市の生活保護の「いま」は、どうなっているのだろうか。

 厚労省と大分県に指導を受けた後の別府市の動きは、迅速だった。2016年3月25日には、新年度を前に、生活保護業務にかかわる職員を対象に、ギャンブルに関する研修会が行われた。研修の内容は、人をトリコにするギャンブルの魅力と恐ろしさに関するものであった。

 また、生活保護が「その人・その世帯の暮らし」を支えるものであるという観点から、ケースワーカーによる訪問調査の重要性が再確認され、2016年度より「訪問調査計画を100%達成する」という目標が設定された。各世帯に対する訪問調査は、原則として年間最低2回(半年に1回)は行われることとなっているが(長期入院・施設入所の場合は年1回でも可)、状況によっては年間12回(1ヵ月に1回)までの訪問調査が計画される。2016年度は、100%には達しなかったが、2015年度以前に比べると改善された。