「脳という臓器」をダイレクトに癒やす

「何もしていないのにダルい…」には、こんな脳科学的メカニズムがあった久賀谷 亮(くがや・あきら)
医師(日・米医師免許)/医学博士(PhD/MD)。イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。現在、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。趣味はトライアスロン。著書に『世界のエリートがやっている最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』(ダイヤモンド社)がある。

では、雑念回路とも言うべきこのDMNは、どうすれば鎮められるのでしょうか?
精神科や心療内科にかかったことがある人は、まずクスリのことを思い浮かべるかもしれません。DMNの活動を抑える治療薬があるのではないか、というわけですね。

ここで医師として強調しておきたいことがあります。日本ではいまだに抗うつ剤や睡眠剤などがかなり安易に処方される傾向にありますが、アメリカの精神医療の現場では、クスリ一辺倒の治療は、もはや過去のものになりつつある、ということです。
この背景には、副作用や依存性の問題などもありますが、いちばん大きな要因は、メンタルケアの世界で脳科学アプローチが発展してきたことでしょう。

私はロサンゼルスにクリニックを開業してから8年ほどになりますが、それ以前には米イェール大学の医学部・精神神経学科で先端脳科学の研究をしていました。
イェール大学は1701年に創立された歴史ある大学で、日本ではアイヴィーリーグ校の1つとして知られています。なかでもイェールの精神神経学科は『USニューズ』という雑誌で、毎年のように世界ランク5位以内に入る高評価を受けています。

私のように、脳科学・神経科学の研究実績を持った人間が、精神科医として活動することは、アメリカではさほど珍しいことではありません。
日本では「精神科医=心の専門家」というイメージがあるかもしれませんが、アメリカでは「脳という臓器をダイレクトに治療すること」が医師に期待されているのです。

では、どのようにすれば脳を休ませることができるのか?
それを次回(明日公開予定)の記事でご説明することにしたいと思います。