実際に無料低額診療を受けるためには、福祉事務所や事業を実施している医療機関で経済状況などを相談する必要があるが、減免措置が認められると無料診療券、低額診療券が発行され、受診時にはそれをもって受診する。有効期限は1カ月~6カ月程度だが、状況に応じて継続してもらうことも可能だ。

 ちなみに、無料低額診療で免除・減免された患者の医療費は、事業を行っている医療機関の持ち出しだ。患者が健康保険に加入していれば、持ち出しするのは患者負担分だけでよいが、無保険の場合は医療費の全額を医療機関がカバーすることになる。無料低額診療の適用事業所は固定資産税などの優遇は受けられるものの、診療報酬の削減で厳しい経営を迫られている今、決して楽なことではない。無料低額診療事業は、「目の前の患者を見捨てることはできない」という医療者の良心によって支えられている側面も大きい。

 しかし、経済的理由で困窮している国民の医療費は、本来、国や行政が面倒をみるべきものではないだろうか。そもそも、国民健康保険法第44条には、生活困窮者の一部負担金は減額、免除することができると定めており、仙台市など一部の自治体では失業などで生活に困っている市民の医療費の自己負担額を減額・免除しているところもある。

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災は、今後しばらく雇用情勢に暗い影を投げかけそうだ。安心して暮らしていくために不可欠な医療保障が整っていなければ、国民が力を合わせて復興を成し遂げることもできない。社会保障の網の目からこぼれて医療を受けられずに手遅れとなるようは悲しい事例をなくすために、政府は新しいセーフティネットの形を構築する必要があるのではないだろうか。