前回は、失業したときの健康保険の手続きについて紹介した。

 失業時の健康保険は、①家族が加入している健康保険の扶養家族に入る、②元の勤務先の健康保険を継続する(任意継続被保険者)、②国民健康保険に新たに加入する、の3つから選ぶのが原則だ(本コラム「第9回」参照)。

 健康保険に加入していれば、病気やケガをしたときにも安心だが、当然、保険料の納付義務も発生する。暮らしに困らないだけの収入があれば、保険料の支払いは問題ないだろう。

 しかし、失業期間が長引くなどで保険料が払えなくなることもある。長引く不況で雇用情勢が安定しない中で、このところ実質的に無保険状態の人がジワジワと増えている。

「払いたくても、お金がなくて払えない」
無保険の背景にある失業と貧困

 会社員の間は当たり前に備わっている健康保険。しかし、「無保険」への転落は、案外、あっけないものだ。

 元の勤務先の健康保険に任意継続で加入した場合、納付期日までに保険料を支払わないと、その月から被保険者資格が剥奪されてしまう。そもそも、協会けんぽや組合健保は会社員が加入するものなので、失業して無職の人が次に健康保険に加入するなら、市区町村の国民健康保険(国保)への加入手続きが必要だ。

 ここで、国保への加入手続きをとっておかないと、「無保険」になってしまい、ケガや病気をしたときの保障が何もなくなってしまう。健康保険に加入していれば、自己負担するのは医療費の3割(70歳未満)でいいが、無保険になると全額自己負担しなければならない。会社都合で解雇されたり、雇い止めにあった派遣社員の人なら、国保は保険料の減免をしてくれたり、支払い期日を猶予してもらうなどの相談にものってもらえるのでしっかり手続きをしておこう。

 ただし、国保でも、保険料を1年間滞納すると健康保険証を返還しなければならず、代わりに「資格証明書」というものが発行される。

 通常、医療機関の窓口で健康保険証を見せれば、かかった医療費の3割(70歳未満)を自己負担すれば治療を受けられる。しかし、資格証明書で受診した場合は、いったん医療費の全額(10割)を負担しなければならない。本来なら、病院が健康保険に請求する7割分は、患者が自ら市区町村に出向いて還付してもらうことになる。

 さらに、1年半以上保険料を滞納していると、患者が支払った医療費から滞納分の保険料を差し引いたものが払い戻されることもある。