ある閉じた系の中のエネルギーの総量は変化しない。これは物理学でのエネルギー保存則だ。経済でのエネルギー問題も突き詰めれば、ここに行き着く。
力学的エネルギー(位置エネルギー・運動エネルギー)、熱エネルギー、光エネルギーなどを、いかに電気エネルギーに置き換えるかの問題だ。もっとも100%変換できない。太陽光発電システムでは変換効率はおよそ20%程度で、残り80%は光として反射されたりする。
「電力買取法案」への
ご執心は単なる延命のため
こんな科学少年の時の夢をくすぐられたのだろうか。急に菅直人首相が、自然エネルギーへの転換を言い出した。不信任案騒動の後、官邸のブログに5回も載せている。それ以前にはまったくなかったのに。
菅首相が、退陣を示唆してから、驚異的な粘りだ。総理は内閣不信任か総選挙でしか代えられない。ズルしても不信任をくぐり抜ければ総理の勝ちだ。もし民主党執行部が辞めさせたいなら、参議院で野党が問責を決議して、慣例によって衆議院の与党から信任案を出して採決すればいい。
ここまでしないと、驚異の粘り腰をみせる菅総理は諦めないかもしれない。彼の政治人生はいつも瀬戸際なので、この程度の逆境は何でもなく、総理という権力への執着のほうがはるかに大きいからだ。
それにしても、急に政権の最優先課題として浮上したのが「電力買取法案」だ。
これは政治的にいえば、単なる延命である。
本当に総理がやりたい課題は、就任直後の所信表明で行う。昨年6月の所信表明には「原子力産業を含むエネルギー部門」への期待はあるが、自然エネルギーは出てこない。10月の所信表明では、役所からの要請であろうが、政策羅列の中に「再生可能エネルギー」、「全量買取制度」がかろうじてでてくる。