最後に、④の既存アセット活用による新規事業とはどのようなものでしょうか? 分かりやすい成功事例のひとつとしては、NTTドコモが1999年にリリースしたiモードが挙げられます。これはNTTドコモが有する数千万という顧客基盤と、それまで携帯電話料金の請求にしか使っていなかった決済基盤という既存アセットを活用したビジネスです。インターネットを介してコンテンツやサービスを提供するプラットフォームを自社のユーザーに展開して課金代行手数料を取るという、まさに既存アセットを最大限に生かして起こした新規事業の好事例です。

 この他にも、古くは使い捨てペンメーカーのBIC社がそのプラスチック加工技術をレバレッジし、使い捨てシェーバーを展開して成功を収めた例などがあり、そうした事例は枚挙に暇がありません。ちなみに筆者の私見としては、最も成功確率が高く、インパクトが大きいのはこの領域のように思います。

 この4つの領域のうち、BCGDVが取り組むのは新規事業創出なので、必然的に③を除く3領域となります。ではここからは、実際どのようにプロジェクトを進めていくのかを詳しくご説明しましょう。

プロジェクトは3つのフェーズで進められる

 BCGDVのアプローチは、「イノベーションフェーズ」、「インキュベーションフェーズ」、「コマーシャリゼーションフェーズ」の大きく分けて3つのフェーズで進められます。

 イノベーションフェーズでは、徹底したアイデア出しののち、絞り込みを行います。要はアイディエーションを行い、それをカチっとした事業計画として、プロトタイプに落とし込む段階のことです。前半は拡散フェーズ、後半は収斂フェーズと2つのフェーズに分けられ、前半ではデザインシンキングの手法を(そして、当然クリティカルシンキングの手法も)活用しながら、数百にも及ぶアイディエーションを行い、後半ではコンセプト案を絞り込んで、最終的な事業計画を練り上げていきます。全体で通常3、4ヵ月かけて行われます。

 プロジェクトをスタートさせるにあたり、まずBCGDVはコーポレートパートナー(協業先)とスコープ(新規事業の目的、展開地域、ターゲット顧客、上市や収益化までの期間など)を決め、このイノベーションフェーズを開始させます。

 イノベーションフェーズでは、通常4回の投資委員会(Immersion Session =没入セッションともいう)が設けられます。投資委員会とは、コーポレートパートナーのCEOや経営幹部と、BCGDVの幹部が参加し、アイデアの評価・絞り込みをする会議のことです。別名の「没入セッション」は、こうした大企業のCEO、 CFO、 COOクラスが何人も集まり、プロジェクトメンバーと一緒に、時には10時間以上もかけて議論を尽くすということからきています。最近流行りのImmersion教育と一緒ですね。