デジタルビジネスへの意識が高まる一方、「自社でどう取り組めばいいのか分からない」という声も多い。先進的な事例から学ぶのも大切だが、それ以上に重要なのは、自社の現場だ。というのも、現場にこそ、デジタルビジネスのタネがたくさん転がっているからだ。

ビジネスの大変化を肌で感じているが
ついていけないと焦るビジネスマンたち

 昨年夏、ガートナーでは企業のIT部門担当者とベンダーを対象に、デジタルビジネスに関する意識調査を行った。「2020年までに日本国内で提供される商品、サービスが大きく変わると思いますか?」という問いに対して、なんと9割もの人が「大きく変わる」と答えた。

鈴木雅喜(すずき・まさき)
ガートナー リサーチ部門ITインフラストラクチャ&セキュリティ バイスプレジデント 

 つまり、デジタルテクノロジー(モバイル、クラウド、IoT、ビッグデータ、ソーシャル、あるいはスマートマシンを中心とした技術)がビジネス自体を大きく変える一大潮流なのだということは、すでに多くの人が自覚しているということだ。

 一方、自分の会社がそれに合わせて変わると答えた人は6割ほどで、若干、腰が引けている。しかし、「もし、トレンドについていけなければどうなると思いますか?」と問うと、3割が「会社の存続の危機だ」と答え、5割が「競合に対して遅れを取る」と答えた。

 この調査結果を見て感じたことは、今や多くのビジネスマンが、デジタルビジネスに大きな関心を寄せており、対応しなければならないと考えているが、一方で自社で何をやればいいのか、具体的なことになると、まだ道が見えていないということだ。

 確かに、自分の生活を見回してみても、デジタル化の恩恵を受けない日はない。天気を知りたければ、今では雨雲の位置までリアルタイムで分かるし、自分が乗りたい電車が止まれば、ツイッターですぐさま状況が分かる。山手線は、電車が今どこにいるかさえ、リアルタイムで分かる。デジタル化の大きな特徴は、こうしたリアルタイム性だ。これはモノのインターネット(IoT)にも通じる話だ(詳細は第2回を参照)。