この席では、フォックスコン側が先に発言し、これからの製品のデザインに関する構想を熱く語った。30分ほどして今度はシャープ側が話す番となった。だが、シャープ側の日本人社員たちが最初に発した言葉は、「明日も引き続き打ち合わせする必要はありますか。今晩、日本に戻る飛行機を予約しているのですが」だったという。

 実は、この会合の前、日本に留学経験のあるフォックスコン社員は、上司から何度も「日本人はどんなことを好むのか」「盆栽は好きなのか」といったことを聞かれていた。シャープ側に誠意を感じてもらうためだ。「日本人は快適なシャワートイレを使う」と聞いた李氏が、開発センターのトイレを全て取り換えさせたほど。フォックスコンは垢ぬけたオフィスビルだけでなく、細かいディテールにまでこだわっていたのだ。

 ここまで心を砕いて、日本人チームを迎える準備をしてきたのに、仕事のことよりも日本に戻る飛行機の便のことに気を揉んでいた日本人社員の態度に、李氏はショックを受けた。フォックスコンで十年あまり働いてきて、そんな集団を見たことがなかったという。

「9个月 富士康改造夏普」と題するこの記事は、シャープの日本人社員の熱意のなさを暴露した。

 フォックスコンの若いスタッフたちは、深センで働くシャープ研究開発部の日本人幹部たちと深夜までディスカッションする。携帯にはSNSのWeChatを入れ、グループチャットの通知が一日中鳴りやまないことも珍しくないという。こうした仕事ぶりに触れた日本人幹部は、「これには本当にびっくりしました」と語っている。

 その結果、シャープの16年度の業績は約250億円の赤字となった。前年度の赤字額が2559億円であったのと比べると、シャープの赤字はすでに9割も減少したことになる。

 松下やシャープに限らず日本の電機メーカーは、緩慢な企業文化や反応の遅さなどを理由に、中国で凋落している。日本人にとって耳の痛い話ばかりだろうが、過去の輝きの歴史と実績にあぐらをかいている日本企業に警鐘を鳴らすつもりで、最近、印象に残ったこの二つの記事を取り上げた。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)