前回に引き続き、アップルシード・エージェンシーの宮原陽介さんに「作家エージェント」の仕事について語っていただきます。今回は印象に残っている作品の裏側、エピソードを語っていただきました。

編集者それぞれの仕事ぶりから学べること

――いま、ここに新しい企画があるとして、宮原さんがすぐにご提案できる、すでにお付き合いのある出版社さんはどのくらいあるのでしょうか?

宮原 それはもう、挙げ切れないですね。数え切れないくらいはあると思います。もちろんすべての企画をすべての出版社、すべての編集者さんにご提案するわけではありませんが。

 出版社さんにはそれぞれ得意のジャンルがあって、編集者さんにもそれぞれの趣味・嗜好がありますよね。企画内容から、「これはこの編集者さんなら興味を持ってくださるかな?」とか、「あの会社ならこの作家さんの意図を汲み取ったものを出版していただけるかな?」とか、そういったことを踏まえてご提案しています。

――やはり同じ会社でも、編集者によって反応は違いますよね。

宮原 そうですね。それはかなり(笑)。その編集者さんが以前に担当された本などからもご興味のある分野がわかります。「編集者によって違う」と言えば、編集者さんの違いを知ることができるのがエージェントという仕事の面白さのひとつですね。

――と言うと?

宮原 編集者さんはそれぞれ自分の仕事のスタイルがありますよね。企画の詰め方にしても、原稿の組み立て方にしても、校正作業の進め方にしても。100人いれば100通りのスタイルがあると思います。エージェントという立場にいることでそれに触れることができるんです。

 自分が編集者の立場のときには、他の編集者さんとお付き合いはあっても、その人の仕事のしかたまではわかりません。著者の方やデザイナーさんであれば分かることもあると思いますが。エージェントという立場で編集者さんに接すると、企画の段階から刊行、PRに至るまですべて観察できます。それはすごく面白いし、勉強になります。本当にひとりひとり違うので。

――そう考えると少し緊張しちゃいますね(笑)。でも、たしかに同じ社内であっても、個々の編集者の仕事のやり方まではわからない部分も多いので、すごく興味深いです。

宮原 もちろん他の方にお話しすることはできないのですが(笑)。参考にさせていただいています。