「書籍づくりの匠」、今回は株式会社アップルシード・エージェンシーの宮原陽介さんにご登場いただきます。宮原さんのお仕事は「作家エージェント」。耳慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、企画・製作・契約まで作家さんのサポートをされるお仕事は、作家さんにとっても編集者にとっても、重要な役割を担っています。第1回目は、作家エージェントの具体的な仕事内容やこの仕事に就かれた経緯などを語っていただきました。

「契約の代理」、
そして本づくりのサポート

――お名刺にも大きく書かれている「作家のエージェント」という仕事について教えてください。

作家に寄り添い、本に寄り添う<br />作家エージェント 宮原陽介(前編)

宮原陽介(以下、宮原) エージェントという言葉のとおり、「代理人」です。何を代理するのかというと、基本的には著者の方が出版社と結ぶ「契約の代理」です。日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカなどでは一般的になっています。たとえば、文芸系の作家さんにはいわゆる「アーティスト」的な人もいて、雑多な契約などが煩わしいということもあります。そういった手続きなどを代理するのが出版エージェントですね。私が担当しているビジネス書の作家さんの場合で言うと、別に本業を抱えていることも多く、ご多忙で執筆以外に手がまわらないケースもあります。そのサポートを行うというのが基本の業務です。弊社では現在80数名の作家さんとエージェント契約を結んでいます。

 当然、新人作家さんを探すという発掘の仕事もありますし、出版希望の持ち込み原稿もたくさんいただいています。そういった中からエージェント契約させていただいた作家さんとは、書籍の企画を一緒に考え、その企画を出版社さんにご提案します。晴れてその企画が書籍化される場合には、作家さんに寄り添って原稿の執筆・校正作業などの実作業もサポートします。

――持ち込みの企画・原稿もかなり多いとお聞きしています。それとは別にご自身で発掘されることもあるということですが。

宮原 編集者の方も同様だと思いますが、書き手として有望かもしれないと思う人をチェックするようにしています。一例で言えば、個人的な嗜好なのですが、私自身がサッカーが好きで、雑誌やウェブなどでサッカーまわりの情報をチェックしているので、その中で見つけた面白そうな方にアプローチするということもありますね。社内では基本的にビジネス系ジャンルを担当しているので、もちろんビジネスまわりの情報チェックも行っています。

――御社のように出版エージェント業務を行う会社は増えているのでしょうか?

宮原 増えているようですね。ただ、作家さんを出版社に紹介するのがメインというところも多いようで、弊社のように企画立案から制作業務、そして契約まですべて行うというところはあまりないかもしれません。