「豚が豚でいられる場所」―生きているうちの「生活の質」
石黒 その話に関わることで僕も昔から、感じてることがあって。虐待や犯罪とまではいかないことですが、動物をいたわる気持ちを持ってない人は、根本のところでは人に冷たいなと思うのです。根拠は示せないけど、そう体感していて。だからもしそういう人がいたら、はっきり距離を取ります(笑)。
本庄 そうかもしれませんね。動物や人に対してどう接するかという問題は、つながっていると思うんです。
石黒 それから、アメリカについて、僕が本作り当初のイメージを超えたもうひとつは、「ファームサンクチュアリ」ですね。なるほど家畜もかと!
本庄 太らされすぎた豚がいたりします。あとは、ロバ、山羊、ニワトリなどが、広い敷地を走り回っています。アメリカは、さきほどお話したように、システマティックに、大規模に畜産を進める国だからこそ、このような施設ができるという側面もありそうです。
石黒 「豚が豚でいられる場所」という看板がかかっているというのを読んだだけで、ハッ! と刺さりました。
本庄 日本では動物保護というと、ほぼ、「命」について語られがちですが、欧米では生きているうちの「生活の質」をも重視します。
石黒 たとえば、家畜の環境とか使役とか?
本庄 そうですね。そして、極端な例にはなるのですが、安楽死の問題にもつながります。病気やケガで絶対に治らず苦しんでいる動物がいたら……。このことについて、欧米人と日本人の考え方の差はあると思い、本にも書かせていただきました。宗教観の違いも大きいのではないでしょうか。