犬や猫が好きな人だけではなく
誰でも関係ある社会問題としての保護活動
石黒 安楽死の話しが出たので、少し関係している、僕の心の奥深く残っている話しがありまして。『どうして?』を出し、数年後に『犬といのち』と、動物保護関連の本を続けて手がけた直後、下関の動物愛護管理センターの職員の方から連絡をもらいました。そして、今、日本で、犬猫の殺処分を、1頭ずつ、注射による方法に変える努力を進めているのでぜひお伝えしたいと。数が多くて複数でガスで行われているのですが、最期の時に、少しでもショックをやわらげてあげたいと。電話口で「本当にやすらかな顔で眠るようにして亡くなります」と、涙ながらに話すのを聞いて、本当に現場の方々の気持ちが刺さりました。
本庄 本当に日本では、人々に情があるところがすばらしいと思います。一般の人の無関心さに対して、施設の現場に足を運んでみると、スタッフの方が一番深く考えながら、毎日毎日向き合っておられて、その姿を一般の人に知ってもらいたいのです!
石黒 そういう方々への精神的なケアも必要ですよね。長く続けていただくためにも。
本庄 愛情に関して言うと、香港のシェルターを訪ねたときも、同じアジアの国として感じたことがあります。保護団体名に「愛護」という言葉が入ってるんですが、日本の動物保護の法律の名前も、「動物の愛護及び管理に関する法律」と言うんです。
石黒 欧米の感覚ではない感じですか?
本庄 そうですね。もちろん、愛情や慈悲の心があっての理念や活動なわけですが、これがいい面ばかりでもありません。犬や猫が好きだから、そんな気持ちを持っている人がやっている活動と捉えられやすいのです。動物に関心がない人にも、社会全体の問題として捉えていくことも必要なので。
石黒 まずは、命の面倒をみない人を減らすことからですね。そして、問題としてはどんなことがありますか?
本庄 一例を挙げると、たとえば、犬や猫が捨てられる、シェルターが必要になります。建設し、職員が働き、維持していくことにお金がたくさんかかります。日本では公営のところが多いわけですから、そこに国や自治体のお金が使われます。なので、少しでも保健所に持ち込む人を減らしていくために市民全体で取り組んでいくとか、そういうこともあります。