携帯ショップや病院も対応せず
「だったら僕が教えるしかない」

「三宅先生は日々の業務でお忙しいし、携帯ショップには対応窓口が存在しないし、病院の看護師さんたちはVoiceOverの存在さえ知らなかったりする。Appleサポートセンターの専門家の方々にお世話になったこともあるけど、やがて彼らの知識を僕が追い抜いてしまった。だったら僕が教えるしかないじゃないか、と」

 そして昨年、「MDSiサポート」という教室を立ち上げ、視覚障害者やその介助者を対象に出張講座を開始したのだ。

 井上さんが指導する相手は、先天性視覚障害者もいれば、中途視覚障害者もいる。また、弱視の人いれば全盲の人もおり、中には当然、iPhoneやiPadを見たことも触ったこともないという人もいる。

「それぞれの見え方や知識に合わせて、まずはiPhoneやiPadを設定してあげます。相手が全盲の人だと立場が近いので教えるのはラクですが、うっすら見える人は目に頼りますから、その『見える喜び』を取り上げないよう配慮しつつ教える必要があります」

たとえばこのようにYahoo!のトップ画面を磁石で再現し、全体図を「触感」で理解させる。実物を見たことがある井上さんならではのアイデアだ

 過去に接客業を経験している井上さんの対応はマイルドかつ丁寧で、相手にすぐさま安心感をもたらすが、目が不自由な人に言葉だけで動作を説明するのは難しい場面もある。そこで彼は、さまざまな道具を使うことにより、イメージをつかみやすくする工夫を施した。 

 たとえば、マグネットボードに磁石を配置し、まずはそれを触らせることで、画面上のアプリの配置などをイメージさせる。そして、同じ要領で実機のVoiceOverをオンにしたまま各アプリを開かせれば、メールやLINE、ニュースなどの文面がすべて音読されるようになるというわけだ。

「こういった日常的な情報を音読してもらえるだけでも、僕ら視覚障害者は大助かりなんですよ。アダルトサイトのスパムメールまで読み上げられて困ることもありますが(笑)」