大震災以降、日本社会は未曾有の難局に直面している。地震、津波に原発事故、さらには政治の機能不全が加速して危機的な状況が続いている。日常生活を根底から揺さぶる重大な出来事が連日のように発生し、社会全体が心休まる時を喪失してしまった感さえある。まさに非常事態の常態化である。明日への不安を抱かざるを得ないやり切れない日々が続く。こうした異常な状況がある現象をもたらせている。通常時ならば、大きく取り上げられるような出来事が、震災と原発危機という大二ュースの陰に隠れてしまうことだ。致し方ない面もあるが、世の関心が集まらず、内心、ホットしている人達もいるはずだ。そのひとつが、地方議員の年金廃止問題である。
議員特権の象徴的な存在として批判の的となったのが、在職12年(3期)で受給資格を得られる地方議員限定の年金制度だ。議員の掛け金が6割で、残り4割が公費負担(自治体の負担金)となっている。つまり、税金の投入である。「地方議員が在職中に安心して議員活動に専念するためにも退職後の生活の安定を支える制度が不可欠」と1961年に議員立法され、地方議員OBへの手厚い給付が始まった。
こうした地方議員年金を廃止する法案(地方公務員等共済組合法の改正案)が5月20日、可決、成立した。といっても、議員特権を撤廃する目的からではなく、制度の維持そのものが困難となったからだ。掛け金を支払う議員数が市町村合併により激減し、年金財政が急速に悪化した。
もともとアンバランスだった負担と受給の関係が大きく崩れ、破綻の危機にあった。全国の都道府県議と市町村議の数は今年3月末時点で、3万5565人。掛け金を支払う現職議員の総数である。これに対し、年金受給者の議員OBは9万3518人にのぼる。市町村議の積立金は11年度にも枯渇する見込みで、制度を廃止せざるを得ない状況に立ち至っていた。