今後の展開を考えると、7月25~26日に開催されるFOMCにて、償還金の再投資の削減やバランスシート圧縮プロセスなどに関する詳細が示され、市場への周知徹底が行われるだろう。状況次第ではあるが、9月のFOMCにて保有資産の段階的な削減が決定される可能性はありそうだ。

「過剰なドル」の縮小で
新興国などで金融市場が混乱する懸念

 バランスシートの圧縮が進むと、債券市場の需給は緩み、金利には上昇圧力がかかりやすい。それが、世界の金融市場を混乱させないかが今後のポイントだ。

 歴史的に、量的緩和策で膨張したバランスシートを望ましい規模にまで圧縮するのは難しい。日銀はそのよい例だ。なお、FRBは2025年にバランスシートの資産規模を3兆ドル程度としたいと考えているようだ。

 2013年5月、当時のバーナンキFRB議長がQEの段階的な縮小(テーパリング)に言及した後、ドル資金が流出する不安から新興国を中心に世界の金融市場は混乱した。この教訓から、今回は混乱を避けるために、可能な限りの情報を公開して政策の正常化を進めることが重要だと、複数のFRB関係者が発言している。

 それでも、その時々の経済状況によって、投資家の心理は変化する。

 先行きの景気動向を考えた時、不安材料は少なくない。不良債権問題が経済の重荷になっている中で、財政支出に支えられてきた中国経済がどこまで小康状態を保てるかはわからない。

 米国では、トランプ大統領の指導力や政策手腕への不安が高まり、財政運営やインフラ投資、税制改革が方針通り進むのかどうかへの不透明感も増している。

 一方で、米国経済の成長につながると期待される分野もある。ビッグデータの活用はその最たるものだ。そのために、人工知能の開発なども注目されている。そうした取り組みを加速させるためには、トランプ大統領が「米国第一」の考えを改め、外国人労働者などの受け入れを積極的に進める必要がある。高度な技能を持つ外国人労働者の入国審査の厳格化などが改められていないことは、政府が成長の萌芽を摘み取りかねない恐れがあるといえる。

 こうした中でFRBが本当に混乱を引き起こすことなくバランスシートの圧縮を進めることができるかは、わからない。

 足元の世界経済は、過剰流動性が支えるリスク資産の高騰に浸っている。それは、FRBが供給してきたドル資金が、ベールのように経済を覆い、実体経済への不安を和らげ、期待を支えている状況と言い換えられる。

 今、多くの投資家は先行きのリスク要因を軽視している。FRBのバランスシートの圧縮が始まるタイミングで、米国内外の景気の下振れが意識されやすい状況になっていれば、世界の金融市場は動揺しかねない。

 その場合には、日本にとっても、リスク回避の資金が円買いを加速させ、円高が進んで景況感が悪化しやすいだろう。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)