小池都知事は20日の記者会見で、市場移転問題について「築地は守る、豊洲は活かす」と述べ、事実上、築地再開発・再整備を軸とする方向性を打ち出した。豊洲市場は、築地市場の一時移転先として利用した後、冷凍冷蔵・物流・加工等の総合拠点として用途転用することで湾岸地域の物流センターとして発展させていくという。メディアの中には、豊洲に一時移転することをもって「豊洲への市場移転」と報じる向きもあるようだが、そうではない。
現時点で、「白紙の状態から市場機能をどうするか」と問われれば、後述する市場環境の変化を踏まえるならば豊洲市場のような巨大な設備を、しかも東京ガスの工場跡地という、市場に最も不向きな場所に整備することなどあり得ない判断であろう。しかし、現実には既に土地建物を手当てし、整備してしまった以上、次善の策を考えなければならない。その観点からすると、筆者は今回の案は非常に理に適ったものであると考える。
そこで緊急に、筆者がそう考える理由について、金融の観点を加味して検証を加えてみたい。なお、本稿は言葉遣いのあり方を含め、筆者の個人的な見解を述べるものに過ぎず、小池知事ほか誰の見解も代弁するものではないことを、あらかじめお断りしておく。
そもそもなぜ豊洲に
移転できなかったのか
世論の一部や自民党は、小池知事が豊洲移転を早期に決断しないことに対して「決められない知事」という批判をしていたようだ。しかし、小池知事は政治家である以前に行政の長だ。移転を実行するには、正しい行政手続きを踏まなければならない。
そもそも豊洲市場用地は東京ガスの工場跡地で、その地歴から用地全域にわたって高濃度の土壌汚染が想定されていた。実際、2008年には高濃度汚染が広範囲にわたって確認された。