日本のアイドルは恋愛厳禁
世界でも独特な文化になった理由

 多くのファンに夢を与えるアイドルは「性」や「恋」を謳歌してはいけない――。

 日本社会では「常識」のように語られているこの考え方は、アメリカのティーンアイドルが10代であっても、恋人の存在を隠さないことと比べてもわかるように、世界的にはかなりユニークな考え方といえよう。

 その思想のルーツを探っていくと、明治期に生まれた日本独特の「純潔信仰」につきあたる。

「オトメの身体」などの著書がある川村邦光・大阪大学名誉教授によると、江戸時代には未婚女性が処女であるかどうかなどはほとんど重要視されなかったが、明治期になって処女性や純潔を極端に重視する考え方があらわれたという。

「当時の中産階級の人々にとって、処女という言葉が意味する純潔は、ほかの血が混じらないという『純血』につながった。その背後には、純血の婦人に、純潔にして優良な子供を産んでもらおうという、ある種の優生思想が存在した」(朝日新聞1999年2月9日)

「ファンのみんな、昨夜は彼氏とデートしてきてすごく楽しかったよ!」なんてことを口走るアイドルが存在しないのは、我々日本人が未だにこの「純潔信仰」に支配されているからなのだ。

 なんてことを言うと、アイドルファンの方たちから「俺たちは別にアイドルに自分の子どもを産んでもらおうなんてことを思って応援していない」という怒りのクレームが寄せられるかもしれない。

 では、なぜ「皆さんのことをアイドル須藤凜々花としてでなく、1人の人間として大好きでした。だからこれから私が結婚するっていう気持ちも本気です」と訴える須藤さんを、ファンは支えないのか。「夢を目指して頑張る須藤凜々花」を純粋に応援したいというのなら、新たな夢も応援してやればいい。しかし、そうはならず、手の平返しでディスっているのは、やはり「純潔信仰」があるからではないのか、と外野からは見えてしまうのである。