多くの日本人は、文法などを気にしすぎて、英語のコミュニケーションが苦手です。しかし、実はたった「3語」で伝えることが可能なのです。

「私の仕事は英語講師です」。これを英語にするとき、私たちはつい「My job is an English teacher.」と言ってしまいがちです。

そうではなく、「I teach English.」。つまり、「主語→動詞→目的語」の3語を並べればいいのです。新しい文法、単語、構文の暗記はいりません。

『会話もメールも 英語は3語で伝わります』の著者である中山氏に、このメソッドの誕生秘話を語ってもらいます。

「3語の英語」の誕生秘話<br />“きっかけは、英語嫌いの学生”

「学生の英語嫌いを、何とかしてください」

 私はこれまで、「英語が苦手な方」に英語を教える仕事をしてきました。講師のお声をかけていただいた最初の大学では、「学生の英語アレルギーを減らしてください」という依頼をいただきました。

「3語の英語」の誕生秘話<br />“きっかけは、英語嫌いの学生”中山裕木子
(なかやま・ゆきこ)
株式会社ユー・イングリッシュ 代表取締役。公益社団法人日本工業英語協会 専任講師。1997年より企業で技術分野の日英翻訳に従事。2000年、特許事務所で電子・電気、機械の特許明細書の日英翻訳を開始し、テクニカルライティングに出会う。特殊で難解な特許の英語であっても、平易に表現できないかと模索を始める。2001年に工業英検1級取得。首位合格により文部科学大臣賞を受賞。2004年、フリーランス特許翻訳者になる。同時に、公益社団法人日本工業英語協会の専任講師に就任し、企業や大学の理工系研究者に対し、技術英語・特許英語の指導を始める。2014年4月、技術英語を専門とする翻訳と教育の会社、株式会社ユー・イングリッシュ設立。高品質の技術翻訳サービスと技術英語指導サービスの提供により、日本企業や大学における技術系英文の品質向上に尽力する。「伝わる英語を身につける」をモットーに、京都大学、名古屋大学、同志社大学などにて、非常勤講師として、大学生の英語力を日々高めている。著書に『技術系英文ライティング教本』(日本工業英語協会)、『外国出願のための特許翻訳英文作成教本』(丸善出版)がある

 授業の方法や内容は問わない、とにかく理系大学院生の英語嫌いの度合いが減る授業をしてください、との依頼でした。

 その後も、大学や企業などで英語講師の依頼をいただきましたが、いずれも技術者・研究者向けの講義です。受講者の多くからは「英語が好きではない」「できれば英語を避けて過ごしたい」「英語の授業を聞き始めると眠くなる」といった、英語に良い印象を持っていないという声を聞いていました。

 はじめの数年、試行錯誤が続きました。ある大学では、「ひとたび私が話し始めると、クラスの半分が寝てしまう」といったことも珍しくありませんでした。

 なぜ日本人は、英語を難しく感じるのか?

 そんな中、あることに気づきました。「英語」というのが、何か「ぼんやりとした世界」であるから、彼らは眠くなってしまうのだ、ということです。

 これは私にも経験がありますが、複数の英語表現のうち、どちらが好ましいのだろうと迷ったとき、判断がつかないのです。中学校や高校では、「文法的に正しい英語」に注力した教育が行われ、どちらの表現がコミュニケーションを円滑に進めるかということは、議論されません。

 その「ぼんやり」とした英語は、「理由と根拠(reasoning)」を求めて日夜研究にいそしまれている理工系の技術者・研究者の方々にとっては、非常にやっかいで難しく見え、そして興味の持てない教科となってしまうようでした。

目指したのは、円滑なコミュニケーション

そこで、「理由と根拠」を大切にしながら、自分自身で英語表現を選択し、「どちらの表現がコミュニケーションをより円滑に進めるか」「どちらの表現が少しでも誤りが起こりにくいか」といったことに焦点を当てる授業を組み立て始めました。

 冠詞から構文の選択まで、ノンネイティブとして、自分で根拠と理由づけを持って英語表現を選択する。そんな授業です。

 その指針としたのは、テクニカルライティング(科学技術情報を正確かつ効果的に伝達するための文書作成技法)の各種ルールです。

英語嫌いな学生がみるみる変わった!

 すると、受講者の反応はみるみる変わっていきました。授業中に寝てしまう学生は、激減しました。そして短期間の講義でも、次のような声を聞くことができるようになりました。