『アナリストが教えるリサーチの教科書 自分でできる情報収集・分析の基本』を上梓した、アナリストの高辻成彦さんに聞く、ビジネスリサーチの基本とは?連載第5回目では、市場シェアの調べ方について取り上げます。

7月前後に公表される
日経シェア調査

 業界の市場シェアを調べるには、いくつかの方法があります。

 例年7月前後、つまり今の時期になると、日本経済新聞社(以下、日経)が、世界シェア及び国内シェアの調査結果を、日経産業新聞に掲載します。

 2017年では、6月26日に自動車、産業用ロボット、半導体製造装置、デジタルカメラなど、製造業を中心に世界シェア57品目が掲載されました。
 国内シェア調査については、例年通りであれば、7月中に約100品目が掲載されるでしょう。

 掲載日や品目数は、毎年一定ではないのですが、ほぼ7月前後に掲載されます。
 日経産業新聞を毎日チェックしていなくても、日経産業新聞に出る日には、日経新聞の朝刊に関連記事が載りますので、今の時期の日経新聞朝刊の報道を注視していれば、掲載に気づくことができるでしょう。

『日経業界地図』を参照する

 もし、日経新聞をチェックしそびれたらどうするのでしょうか?
 ご心配にはおよびません。

 日経産業新聞に掲載された市場シェア情報は、『日経業界地図』という本に掲載されます。
 ただし、『日経業界地図』の出版は、日経産業新聞での掲載から数ヶ月後になりますので、早めに直近年のシェア情報を入手したい場合には、日経産業新聞を探すことをおすすめします。

日経テレコンやネット検索で探す

 日経がサービス提供している日経テレコンが使えるようでしたら、日経テレコンで記事検索してみる手もあります。

 日経シェア調査に載っていない製品・サービスでも、日経新聞では記事で取り上げている場合があるため、調べてみるといいでしょう。
 それでも載っていない場合は、ネット検索で情報を探してみましょう。

市場調査会社の調査報告書を入手する

 日経や、ネット検索で市場シェアが得られない場合には、市場調査会社の調査報告書を入手しましょう。
 業界の網羅性が高いのは、矢野経済研究所や富士経済の調査報告書です。

 ただし、業界によっては、毎年調査を行っている場合もあれば、そうでない場合もあります。
 また、特定の業界については、IDCやGartnerなど、四半期おきに推計・公表している調査会社もあります。

事業会社のIRデータ

 事業会社のIR情報から入手できることもあります。
 情報開示の進んでいる事業会社の場合、ウェブサイトのIRページで公表しているアナリストや個人投資家向けの説明会資料に、市場シェア情報を載せていることがあります。

 これは、投資家に自社の株を買ってもらうために、自社の市場シェアをアピールするためです。
 ニッチな製品・サービス分野でシェアの高い企業ほど、投資家にアピールするために載せることが多い印象です。

 また、事業会社のウェブサイトになくても、シェア情報を持っている場合もありますから、載っていない場合は、問い合わせてみてもいいでしょう。

自分で推計するケース

 市場規模と同様に、市場シェアも自分で推計してみる方法もあります。
 たとえば、国の経済統計や業界統計などで市場規模がつかめる場合、調査対象企業の売上高や受注高、販売台数、生産台数といった、同基準の情報が得られれば、推計は可能です。

 推計する場合には、どういう条件のもとで推計したのかを、明示するようにしましょう。
 たとえば、業界団体の統計をもとにした場合には、「〇〇工業会の受注統計ベースでは、」などと書きます。

 市場規模が大きな業界や、業界団体が整備されている業界の場合、シェア情報の入手が比較的容易ですが、非上場企業の多い業界や、市場規模がつかみにくい業界の場合、シェアをつかむのは容易ではありません。

 こうしたケースでは、どうしても推計できないこともあります。推計にも限界があることは知っておきましょう。