従業員のミスコン出場を全面応援!
ユニークなトニー流経営術

 ある日、タイ線で働いているCAが、彼に休職を申し出た。

 理由を聞くと、「ミス・タイになりたいから」。ミスコンテストに応募するには、運動やダイエットやエステなどの身体の手入れに加えて、さまざまな勉強をして知識を得ていく必要がある。今の業務と両立はできないため、休職して、ミスコンに集中したいというものだった。

 それを聞いたフェルナンデス氏は、「いいよ。休んでいる間の給料は払うし、ミスコンに必要な費用も会社で持つよ。その代わり1つだけ条件がある。もしミス・タイになったら、いつでもどこでも乗客との写真に応じてあげてくれ」と言った。

 そしてその女性は、ミス・タイを射止めたのだ。彼は「エアアジアは、国のミスコンテスト優勝者がサービスしてくれる唯一のエアラインです。しかも写真も撮り放題!」と、会場を沸かせていた。実際、タイ線の搭乗率は上昇したという。

 彼は、従業員の持つ様々な価値観、生き方を理解し、支援し、そしてそれをビジネスに還元させている。そのやり方が、ますます従業員のコミットメントを高め、質の高いサービスにつながると考えているようだ。そのためには彼らの立場、彼らの目線を理解する必要があると語っていた。

 あるとき、若い男性従業員がトニーにお願いをしてきた。その従業員は荷物係で、飛行機に乗客の荷物の載せるのが仕事だ。荷台の高さというのは一定ではなく、航空機材によっては、荷台の高さが20~30センチほど違うのだそうだ。現在の運搬車の場合、低い荷台の機材ならOKだが、高い荷台の機材だと、荷物を持ち上げて載せるのが相当きついという。高い荷台に適応できるようにコンベアを導入してくれないか、というものだった。

 フェルナンデス氏は、最初は断ったという。エアアジアはLCCであるため、航空機預かりの荷物を有料にしている。したがって、もともと荷物量は多くない。そのうえ、わずか20~30センチのために、コストのかかるコンベアを導入するのは、採算が合わない。しかし彼は、その後思い直して、あることを行った。

 自分で手荷物係の業務をやってみたのだ。そうすると、その20~30センチの違いは、実際に、身体に相当な負担を強いるものであることが分かった。事実、彼は高い荷台の機材への手荷物運搬の際に、背中を痛めてしまったという。

 フェルナンデス氏は、その直後に従業員の元に赴き、自分の不明を謝罪した。そしてすぐにコンベアを導入したという。