話題の有無は相手との関係性に深く関わる

 では、このセリフが出てきてしまう背景を考えてみましょう。筆者の考えでは、大まかには以下の3つくらいにケース分類できるのではないかと思っています。部下の頭の中で起こっていることについてです。

(1)話すことが本当に何もない
(2)話してもよいことはあるが、今はそのタイミングではない
(3)あなたに話したところで仕方がない

 まず、(1)については、本当に何もないということなどあるのでしょうか。一週間仕事をしていて、上司と話すべきことが1つもないということは、さすがに稀なのではないかと思います。あり得ないとまでは言いませんが、相手と話す気さえあれば、無理にでも1つくらいの話題は見つかるのではないかと思いますがいかがでしょう。

 そうなると、ほとんどが(2)か(3)ということになりますね。そして、これらはいずれも、話している相手との関係性に深く関わっていることは察しがつきます。

 上司と部下との関係性などと言ってしまうと、一朝一夕には片付かない課題に聞こえてしまうかもしれませんが、これもある種の鶏と卵の関係で、まずは何でもよいので、部下に話してもらうきっかけを与えていくことが、信頼関係を形作っていくことにつながります。ここでは、最も始めやすいTIPS(コツ)をひとつ紹介しておきましょう。

「部下を日々観察する中で、2、3個の話題を拾ってメモしておき、それを持って1on1に臨む」

 部下の様子で少しでも気になったこと、例えば、部下と周囲とのやり取りの中で「おや?」と思ったことなどです。些細なことでまったく構いません。

「そう言えば、昨日の会議のあと××さんと話してましたよね。少し困っている様子に見えたけど、何の話だったんですか?」

「メールの問い合わせ対応お疲れ様。横からやり取りを追ってたんだけど、収束させるのうまいよね。どの辺がポイントだったの?」

 実際に行っていた仕事と紐づく事柄で、記憶が呼び起こされる話題を用意しておきます。

「え?そんなことでいいの?」と思われる方もいるかもしれませんが、個々の部下について、普段の仕事ぶりを見ながら気がついたことをマメに記録している上司は思いのほか少ないです。