本ケースでは、Aさんに少しばかり“うつ”を疑わせるような症状が見られたことと、発達障害も気になったため、会社はAさんにメンタルクリニックを受診してもらったそうです。B課長には上司である部長も同席のもと、人事部長より今回のAさんからの訴えについて説明し、Aさんの場合は、口頭よりメールなどの文字ツールでコミュニケーションをとりながら、長所を伸ばすようなマネジメントをしてほしい旨、指導したとの報告がありました。

 加えて、最近、同社ではAさん以外にもこのような相談が増えていることから、近々全管理職に向けて、発達障害の傾向を持つ部下指導について、正しい理解を促す研修会を実施する予定とのことです。

 パワハラの加害者像というと、悪意に満ちた、いやな上司を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、誰も悪くはない、みんながいい人という中で起きてしまうこともあります。もし、起きてしまえば、被害者本人にとっても、指導する上司にとっても、会社にとっても、三者三様とても残念なことです。

 とはいえ、すでに発達障害者のための取り組みをし、効果が現われている企業は問題ないかもしれませんが、中にはどういうふうに接して、どんな対策をしたらいいのか、悩まれている企業担当者もいるかもしれません。症状は一人ひとり異なるため、産業医に相談しながら個別対応をしなくてはならないでしょう。発達障害の社員とどう接し、能力を発揮させる方法としては、厚生労働省の「発達障害のある人の雇用管理マニュアル」に「発達障害と思われる社員への対応」や「様々な職場で働く発達障害のある人の事例」などが出ているので参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考文献:加藤進昌著『大人のアスペルガー症候群』(講談社) 

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。