ここしばらくインフレが話題になっている。しかし、単純なインフレではない。物価の観点で日本経済の現況を眺めると、消費者にとってはインフレ、生産者にとってはデフレという構図が見えてくる。生産者にはデフレ、という点が深刻だ。

 総務省が7月25日に発表した6月の消費者物価(CPI)は生鮮食品を除くベースで前年同月比1.9%上がった。5月は1.5%だった。6月の1.9%は、約15年ぶりの上昇率になる。

 特に値上がりが目立つのは、エネルギーと食料品だ。まずエネルギーから見ると、ガソリンが24.2%、灯油が42.2%と上がり(すべて対前年同月比。以下同様)、物価指数ベースで言うと1.9%のうちの1%強の押し上げ要因だ。一方、食料品では、目立ったものでは、スパゲティが33.2%、チーズが27.3%、チョコレートが22.8%と高騰し、物価指数ベースでの寄与は約0.8%だった。

 主として、エンゲル係数の高い低所得者や、地方に住んでいて自家乗用車を使わなければならない人の生活が圧迫されているということだ。

 その他の重要な物価指標に目を転じると、まず輸入物価は、6月は対前年同月比で17%、5月は10.8%と、二ケタ台の上昇ペースにある。一方、企業物価は、6月が5.6%、5月が4.8%と、約5%程度の上昇ペースだ。企業の仕入れ価格は着実に上がっている。 

 これに対して、消費者物価がまだ1.9%ということは、今後ガス料金も電力料金もが上がり、ガソリン価格もまだ上がりそうだとはいえ、価格の転嫁が十分に進んでいないということだ。
 
 価格転嫁が進まない、大きな理由としては、消費者が価格に敏感なことが挙げられる。日本フードサービス協会が25日に発表した2008年上半期の外食売上高(既存店ベース)は前年同期比1.2%減少した。減少は2006年上期以来2年ぶり。客単価は0.9%と若干のプラスだったが、客数は4.4%減った。中でも落ち込みが特にひどかったのがファミリーレストラン(ファミレス)で、売上高は3.6%減少した。ファミレスは食材費の高騰を受けて、値上げしたところが多い。

 消費者の気分が現れやすい外食が落ち込んでいるということは、やはり国民の生活が少しずつ苦しくなっていて、外食しようというようなお金を使う気分ではなくなっているということだろう。