少し気が早いが来年、2012年の話をしよう。来年は激動の年だ。世界情勢の先行きを左右する国家のリーダーが一斉に交代する可能性がある稀有な年なのだ。何事も備えあれば憂いなし。逆算して準備することが大事だ。来年はマヤ暦で人類滅亡の年などという人もいるが、そうならないよう、今から事態を注視していこう。

 前述の通り、来年は世界のトップの交代が相次ぐ。口火を切るのが、1月の台湾の総統選挙。続いて、3月初旬にはロシア大統領選挙。期日は決まっていないが、順当にいけば3月中旬には中国の国家主席の交代がある。5月にはユーロの未来を左右するEU主要国のフランスで大統領選挙がある。7月には最近暴動騒ぎがあったロンドンでオリンピックが開催される。11月初旬にはアメリカ大統領選挙がある。12月にはお隣の韓国で大統領選挙がある。

 こうみていくと、世界主要国の命運を左右する、つまり世界の安全保障や経済の行方を左右する大切な選挙や交代劇が目白押しだ。こんなに重なる年も珍しいのではないか?

 最初のトップ交代選挙から見ていこう。台湾の総統選挙である。中台関係は中国寄りの国民党・馬英九総統のもととても安定していた。しかし、勢いは野党民進党にある。しかも政権交代の可能性がある。台湾のナショナリズムを煽る民進党候補が、国民党の現職・馬総裁に勝つ可能性は十分あると思う。その時は中台関係は今のようにスムーズにはいかない。

台湾政権交代が中国新主席を煽る

 台湾の総裁選挙を受けて、中国のトップが交代する。選挙がない中国も要注意だ。次期国家主席に内定している習近平氏は時として激しい愛国的発言で人心掌握を狙う。かつて、大衆人気を煽るために「今の中国共産党幹部の演説や文章は、“冗漫、空虚、偽り”だらけだ」と激しく共産党を批判したことがある。また「腹が一杯になって暇な外国人が、われわれの欠点を口うるさくあげつらっている」と人権問題を巡り、米国を挑発した発言をしたことがある。朝鮮戦争60周年の記念行事では、「朝鮮戦争は平和を守り侵略に立ち向かった正義の戦争」と発言し、韓国から反発を招いた。国民の人気と結束を求めるための大衆寄りの愛国的発言で、対台湾、対米、対日、対韓の関係が悪化することも十分予測される。